保育士に月額5〜7万円プラス「松戸手当」なぜ支給? 松戸市役所に聞く若手の家賃補助、ベテランへの表彰も

» 2018年02月05日 14時44分 公開
[濱口翔太郎ITmedia]

 千葉県松戸市が市内で働く保育士に、勤務施設からの給与とは別に一定額の支援金を毎月給付する「松戸手当」がネット上で評判を呼んでいる。制度がスタートしたのは昨年10月だが、あるユーザーが最近Twitterで紹介すると2万人以上が拡散。「松戸市に引っ越したい」「他の自治体も見習ってほしい」「税金の払いがいがある」――と評価する声が相次いだ。

photo 「松戸手当」の詳細(=松戸市公式Webサイトより)

 松戸手当の金額は、保育士経験が1〜11年目の人は1カ月当たり4万5000円。その後19年目までは、年次が上がるごとに約3000円を増額する。20年以上のベテランには、上限の7万2000円を支給する。

 このほか、1人暮らしをする1〜4年目の保育士に月額3万円の家賃補助を給付する制度、保育士の子どもの保育所入所を優遇する制度、市内で10年以上勤務した保育士を表彰し、3万円相当の記念品を贈呈する制度――なども取り入れている。

photo 若手への家賃補助、ベテランへの表彰なども充実させる

 松戸市はなぜ、保育士の労働環境の整備に注力するのだろうか。

都内・他市への流出防ぐ

 松戸市幼児保育課は、「松戸市は東京都に隣接しているため、給与の高い都内に保育士が流出していた。船橋市など県内の他地域も保育士の優遇を始めており、対策が必要だった。保育士の数が少ないと、面倒を見られる子どもの数が限られてしまうため、人材確保に向けて労働環境を充実させている」──と説明する。

 「松戸市は以前から子育てに特に注力しており、『松戸手当』開始以前も保育士に月額1万円を給付していた。しかし、保育施設からは給与を上げたいとの要望が出ていた。昨秋、千葉県から補助が出ることが決まり、財源のめどが立ったため思い切って増額した」という。

正直、予算ギリギリ

 ただ、担当者は「千葉県から援助が出ているとはいえ、制度を盛りだくさんにしすぎたため、正直言って予算ギリギリの状態だ」と明かす。「だが、『松戸手当』は他地域との競争に勝つためには欠かせない施策。今後も減額などはせず、給付を継続していく方針だ」という。

 支援金の増額に踏み切って以降、市内の保育士数は徐々に増加。現場からも「専門性が求められていると感じ、身が引き締まる思いだ」「よりやりがいを感じられるようになった」との声が出ているという。

photo 徐々にではあるが、保育士の増加につながっている(=写真はイメージです)

4月に保育士増えてほしい

 担当者は、「一連の施策が大きな成果につながるのはもう少し先だろう。就職・転職の節目である4月に、多くの人材が松戸市にやって来るとみている」と予測する。

 現在、松戸市内で働く正規雇用の保育士は796人。担当者は、当面は人数の目標を設けず、施策の影響を注視する方針だ。

 「手厚い支援を魅力に感じ、都内や千葉県内の他市から転職してくる保育士経験者や、大学卒業後に松戸市で働くことを選んでくれる新人保育士が増えるとうれしい」

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