積水ハウスはなぜ“地面師詐欺”を見抜けなかったのか前社長のクーデターは「なかった」

» 2018年03月06日 18時26分 公開
[ITmedia]

 積水ハウスは3月6日、2017年に分譲マンション用地取引で詐欺に遭い、約55億5千万円をだまし取られた問題について、発生経緯と要因をまとめた調査報告書を公表した。リスク管理を担う複数の部門が詐欺を見抜けず、外部からの指摘を「嫌がらせ」と判断して振り込みを断行していたという。

 一部報道機関が和田勇前会長の退任理由を「阿部俊則前社長のクーデターによる解任」などと報じていたが、これについても「和田氏による自主的な申し出」「マンション用地取引の責任問題とは無関係」としている。

photo 積水ハウスの公式Webサイト

なぜ詐欺を見抜けなかった?

 積水ハウスは詐欺を見抜けなかった要因を、(1)(偽造済みの)パスポートなどによる本人確認を過度に信頼していた、(2)購入起案に対し、関連部署が内容の精査や判断のけん制を行わなかった、(3)現場と本社関係部署がリスク情報の分析・共有ができていなかった――と分析。

 こうした理由によって、同社は“地面師”との取引の際に不信な点に気付かず。外部から文書、訪問、電話などでリスク情報が事前に届いていたものの、関連部門は「取引妨害」と判断し、上層部などに情報共有を行うことなく金銭を支払ったとしている。

photo 積水ハウスが公表した報告書

 具体的な部門としては、内容を精査しなかったマンション事業本部、リスク管理を怠った不動産部、重要なリスク情報を関連部署や社長に報告しなかった法務部などを挙げている。

 同社によると、マンション事業部長は昨年末に既に辞任しているほか、責任の所在を明確化するため不動産部長と法務部長は部長職を解いたという。退任済みの和田前会長、会長職に退いた阿部前社長にも結果責任があると結論付けている。

 同社は今後、仲井嘉浩現社長が率いる体制下で(1)重要な投資案件に関しては、経営会議によって審議・検証を行う、(2)部署間の連携を徹底し、リスク情報を共有する、(3)稟議制度の運用方法を改善する――といった対応策をとり、再発を防いでいくとしている。

株主から訴訟提起

 一方、積水ハウスは6日、詐欺事件の発生要因は阿部前社長が監督を怠ったためであり、善管注意義務・忠実義務違反があったとして、個人株主から5日付で提訴請求書を受け取ったことを明らかにした。

 今後は監査役が提訴の内容を調査し、対応策を検討するという。積水ハウス側が責任追及などの訴訟を提起する場合は、速やかに告知するとしている。

photo 株主からの訴訟提起に関する発表

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