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» 2018年03月22日 06時30分 公開

小売・流通アナリストの視点:地方ドラッグストアの戦略がマス広告を遺物にする? (1/4)

地方のドラッグストアチェーンがベンチャー企業と始めた、ある取り組みに注目している。これは従来のマス広告や広告業界に大きな影響を与える可能性を秘めているのではなかろうか。

[中井彰人,ITmedia]

 2018年の就職人気ランキングで銀行の人気が急落している、という記事をいくつか見掛けた。メガバンクの相次ぐリストラ報道や、人工知能(AI)による効率化によって人員削減が進むといったウワサが、銀行業界への就職をためらわせているという解説だった。

 長年、銀行業界に身を置いていた筆者としても、さもありなんというのが素直な感想だ。長い歴史を持つ銀行業務は、細部までルールが定められており、そうしたルールに従って正確に事務処理を行うことが求められる仕事であることは間違いない。囲碁や将棋の世界では、電脳戦でAIに勝てない時代がいち早く到来しているが、銀行業務の大半もAIのほうが正確で効率的な処理できる範疇(はんちゅう)だということなのだろう。

 遠くない先にAIに代替される仕事に習熟しても、これからの若者のキャリアとしてはふさわしくはないのだから、そこに就職する意欲が低下するのは当たり前なのかもしれない。

広告代理店業界の先行きも……

 そうした記事の中には「銀行以上にランキングを落としている企業がある。それが広告代理店の電通だ」というくだりもあった。高給取りではあるが、過酷な労働環境が報道などで明らかになり、学生からは敬遠されているという。これからは給与水準が高いだけでは、人材を確保することは難しく、労働環境を適正に整えることが重要だ、という趣旨の記事だったのだが、それだけではないような気がした。

 労働環境がきっかけのランクダウンではあるが、それ以上に広告代理店という業界自体の先行きに、若者が不透明な印象を抱き始めているということが背景にあるように思ったのだ。

かつては大人気企業だった電通 かつては大人気企業だった電通

 ちょっと前までは、消費者向けに商品やサービスを売っていくためには、マスメディアを通じた広告宣伝は極めて重要であり、テレビなどを通じたCMが成功することと、商品、サービスがヒットすることは直結していたと言ってもいい。

 特に一般消費者向けに自社ブランド製品を売っている食品、家庭用品、化粧品などの業種では、今でも売り上げの1割程度が広告宣伝費に回っているという統計もある。これまでこうした費用の多くが、広告代理店を通じてテレビCMに投入されていたのだ。

 しかし、テレビを通じて情報を仕入れるといた時代は終わりつつあり、YouTubeやSNSが情報源の主役となりつつある。こうした様子を見ていると、マス広告を軸とした広告代理店業界が、この先もこれまで通りの高給取りであり続けるということは想像し難く、その上、労働環境に難があるというイメージを持たれていたら、就職したいと思う学生は減って当然だろう。その意味で、広告代理店も銀行と同様、昭和の産業なのだと思う。

 こんな感想が湧いてきたのも、少し前に新聞でみた小さい記事が頭から離れないためだ。それは、地方のドラッグストアがベンチャー企業と始めた、ある取り組みに関する報道だった。

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