ゴキブリ退治の最新トレンドが、ヤバい未来につながる理由スピン経済の歩き方(1/4 ページ)

» 2018年04月17日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

 先日、キンチョーでおなじみの大日本除虫菊のゴキブリ用殺虫剤「コックローチ」のなかで、パッケージに「ゴキブリ」のイラストがなくなるバーションを販売したら、えらく好評だというニュースがあった。

 確かに、世の中には、ゴキブリの姿を見るだけで恐怖でパニックになる人も多くいる。そういう方たちからすると、ゴキブリ退治のための商品にゴキブリの絵を付けるなど言語道断だ。実際、ネット上には「ようやく気付いてくれたか」という意見も散見される。

 このニュースからも分かるように、最近のゴキブリ駆除のトレンドは、いかにして「ゴキブリ感」を消すかがキモとなっている。

 その代表が、業界最大手のアース製薬が2017年2月、「ゴキブリ退治の進化版」として発売してから人気となっている「ゴキプッシュプロ」だ。

 これは同社が実施した「印象調査」で、「ゴキブリは死骸であってもその姿を見たくない」という回答が多いことから発売されたもので、「すき間に潜むゴキブリ・トコジラミ 見ないで退治!」とパッケージにデカデカとうたわれていることからも分かるように、シュッとスプレーするだけで、ゴキブリ本体をまったく目にすることなく駆除できるというものだ。少し前にヒットしたフマキラーの「ゴキブリワンプッシュ」も同じ使い方だが、こちらは薬剤を浴びたゴキブリが興奮して、物陰からあらわれて死ぬという「追い出し効果」がある。それに対して「ゴキプッシュプロ」の場合、姿をあらわす間もなく物陰でそのまま死ぬのだ。

 「素晴らしい! メーカーさん、そういうのじゃんじゃん開発してよ」というゴキブリ嫌いの方たちからの拍手喝采が聞こえてきそうだが、個人的にはこのトレンドはかなりヤバいと危惧している。

 「ゴキブリの姿を見ずに駆除」と聞くと、AIスピーカーのように「面倒なことは進歩したテクノロジーが代わりにやってくれます」みたいな明るい未来を連想する人も多いだろうが、この件に関してはそうとも言い難い。このコンセプトの製品が主流になると、メーカー、消費者双方にとってもかなりマズい事態を招く恐れがあるからだ。

 理由としては2つある。

コックローチのパッケージに「ゴキブリ」のイラストをなくしたところ、消費者から好評だったという
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