山口達也さんの事件で、見落としている「少年の心をもったおじさん」問題スピン経済の歩き方(3/5 ページ)

» 2018年05月08日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

我々の周りにいる“プチ山口達也”

 「言われてみれば、ウチの部長も飲み会で大人とは思えないほど泥酔してたな」「オレの周りもヤンチャという言葉では形容できないほどムチャクチャやるおっさんがいるな」など、思い当たるフシのある方も少なくないのではないか。

 そこで次に問題となってくるのが、我々の周りにいる“プチ山口達也”や“プチ福田淳一”の荒ぶる魂を抑えて、彼らの暴走をどう未然に防ぐかということである。

 いろいろなご意見があるだろうが、問題解決のカギは「仲間意識」にあると思っている。

 なぜ周囲が山口さんや福田さんの暴走を未然に止めることができなかったのかといえば、彼らのいる「ムラ」の仲間たちからは、そこまでの「問題人物」だと思われていなかったからだ。

 むしろ、仲間ウケは悪くなかったといっていい。

 城島リーダーは山口さんのことを「屋台骨」と評したし、麻生太郎財務大臣は福田さんを「5〜6年ぐらい縁があり、仕事ぶりを見ても(過去の財務次官と比べ)そん色ない」と言った。ここからは同じ苦楽を共にしたきた「仲間」という意識がにじみでる。

 このあたりが女性のみなさんはピンとこないかもしれないが、「ムラ社会」に肩までドップリと浸かって生きてきたおじさんたちは、こういう「キサマとオレとは、同期の桜」みたいなノリに弱い。

 どんなにモラルの欠けた行為をしても、同じ釜のメシを食ってきたというだけで「そこまで性根の腐った人間じゃない」と擁護(ようご)する。男同士で付き合うなかで「いい奴」「頼れる奴」という評価を受けてきた者がヘタを打っても、「あいつもしょうがねえな」とついつい甘くなる。

 事実、山口さんもTOKIOのメンバーたちからすれば「いい奴」「頼れる奴」以外の何物でもなかった。

 サーフィンをこよなく愛し、農業や無人島サバイバルでみせる「頼もしさ」に加え、誰よりも仲間を思う男気もある。要するに、クラス内で人気の小学生がそのまま歳をとったようなキャラクターなのだ。

 だからこそ、ダウンタウンの松本人志さんが明かしたように、芸能界では有名な酒癖の悪さであっても、20年以上にともに過ごした仲間たちは「しょうがねえな」と甘やかしてきたのである。こういう「ムラ社会」の「仲間意識」が、「少年の心をもったおじさん」の暴走を招いたと言ってもいい。

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