なぜ1枚550円のシールが争奪戦に? ボンドロブームが示した「レアの正体」廣瀬涼「エンタメビジネス研究所」(1/3 ページ)

» 2026年02月20日 07時30分 公開
[廣瀬涼ITmedia]

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 ボンボンドロップシールの魅力は何か。前編では1枚数百円にすぎないシールが起こしているさまざまな騒動を紹介した。転売により価格が高騰し、模倣品まで登場。窃盗事件が発生し、家庭間の格差も浮き彫りにしている。

 こうした実態を踏まえると、ボンボンドロップシール人気の要因は、単なる「かわいさ」や「交換する楽しさ」などでは説明できない。なぜ人々は、これほどまでにボンボンドロップシールを欲するのか。本稿では、この現象を「レア商品」という観点から探っていく。

なぜ、ボンボンドロップシールを欲するのか?

 そもそも、レアとは簡単には手に入らない特別な状態を指す言葉だ。商品は一般的に「コモディティ商品」と「ぜいたく品」に分けて考えることができる。前者は、ティッシュペーパーやペットボトル飲料水のような、誰が買っても品質や機能に大きな差がなく、日常的に消費される商品を指す。ここでは「持っていること」自体に特別な意味はほとんど付与されない。

 一方、後者は必需性を超えた価値を帯びた商品である。高級ブランドのバッグや限定モデルの腕時計のように、所有することそのものが象徴的な意味を持ち、しばしば社会的な評価や自己表現と結び付く。価格の高さや入手の困難さが、その価値を補強する役割を果たす。

 両者の違いは「機能のために消費されるのか」、それとも「意味のために消費されるのか」という点である。

 その意味で、レア消費は「意味のための消費」と位置付けることができる。シールのように本来は日用品に近い商品であっても、ひとたび「レア」と認識されれば、その商品自体の機能やデザイン以上に、「レアである」という属性そのものが価値を帯びる。

 つまり、モノそのものではなく、「レアだという記号(文脈)」が消費の理由となるのである。

 例えば、ポケモンカードに代表されるトレーディングカードには、「C(コモン)」「R(レア)」「SR(スーパーレア)」「UR(アルティメットレア)」など、あらかじめ公式が定めたレアリティ区分が存在する。現在では20前後に細分化され、1箱に必ず1枚封入されるものから、出現率1%程度のものまで、封入確率は明確に設計されている。

ポケモンカードのなどのトレーディングカードでは、公式によってレアが決められているものも存在する(画像:ポケモン公式Webサイトより)

 つまり「出現率=希少性」という構造が制度として組み込まれており、レアは製造者によって意図的に生み出されている。

 これはカードに限った話ではない。数量限定や期間限定、地域限定といった販売条件も、流通量を制御することで「手に入りにくさ」を演出する仕組みだ。希少性はモノ自体の性質というより、流通の設計によって規定されているといえるだろう。

 経年による希少性もレア度を上げる要素になる。時間の経過とともに失われ、現存数が自然と減少していく、ビンテージやアンティーク商品などが分かりやすい例だ。時間が経ってもなお残っているという事実そのものが、希少性を生み出す。

 ポケモンカードでいえば、「かいりきリザードン」が象徴的な例だ。1996年10月20日発売の第1弾拡張パック初版に収録されたこのカードは、本来「かえんポケモン」と表記されるべきところが、「かいりきポケモン」と誤植されたエラーカードとして知られている。

かえんポケモンのリザードン(画像:ポケモン公式Webサイトより)

 誤りはすぐに修正されたため、初版の流通枚数は少ない。しかし、それ以上に重要なのは、発売から約30年が経過しているという事実である。「誤植」という偶然性と「時間」という不可逆性が重なり合うことで、このカードは数千万円という価格で取引されるまでになった。2022年にはYouTuberのHIKAKINが約5000万円で購入したことでも話題となった。

1枚5000万円のポケモンカードガチで購入【合計????万円】【ポケカ】【カード日本記録!?】
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