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» 2018年05月09日 06時00分 公開

長浜淳之介のトレンドアンテナ(後編):センベロの王者 「晩杯屋」を創業者が手放したワケ (1/5)

わずか10年で東京を代表する立ち飲みチェーンに成長した「晩杯屋」は、丸亀製麺を展開するトリドールホールディングスに買収された。なぜ、自力での成長を諦めたのだろうか。

[長浜淳之介,ITmedia]

長浜淳之介のトレンドアンテナ(後編):

 わずか10年弱で東京を代表する立ち飲みチェーンに成長した「晩杯屋」。お酒とつまみ3品程度で1000円以下という低価格が支持され“センベロの多店舗化”にまい進していた。成長途上だったのに、なぜトリドールホールディングス(HD)に買収されたのだろうか。

 →センベロの王者 「晩杯屋」急成長のワケ

 →後編、本記事


 前回、立ち飲みチェーンとして急成長する晩杯屋のビジネスモデルや創業の経緯について解説した。今回は、創業者の金子源(はじめ)氏が大きな影響を受けた赤羽(東京都北区)の老舗立ち飲み居酒屋や、トリドールホールディングス(HD)に買収された背景について考察する。

 晩杯屋にはモデルとなった店がある。金子氏は開業する前に短期間ではあるが、赤羽の老舗立ち飲み居酒屋「いこい」で修業をしている。そのため晩杯屋ののれんには、「赤羽いこい系」の文字が刻まれている。

 それでは晩杯屋の元となったいこいとはどのような店だろうか。いこいは東京都北区で酒類の業務用卸を営むアサヌマが経営しており、北区の赤羽に2店ある。赤羽は東京都葛飾区の立石、横浜市の野毛などとともに「センベロ(1000円でべろべろに酔える)」の聖地として観光化が進んでいる。中でもいこいは代表店として人気が高く、いつも満席だ。いこいの爆発的人気も、晩杯屋のブレイクに一役買っている。

 ほとんどのおつまみが100円台であること、おつまみの種類と傾向、店のチープで昭和感ある雰囲気、キャッシュでその都度会計する方式、「コの字型」や「Lの字型」カウンターなど、いこいを訪れた印象はまるで晩杯屋そのものである。

photo 「赤羽いこい系」が刻まれたのれん
photo 立ち飲み客でにぎわういこい

 晩杯屋といこいの違いはどこにあるのだろうか。

 いこいには固定的なグランドメニューがあるが、晩杯屋は仕入れによってメニューが毎日変わる。また、晩杯屋は効率を重視して、焼鳥のような串焼きを出していない。さらに、晩杯屋は会計方式の合理化も進めており、新しくオープンした店ではiPadで注文して最後にまとめて払うようになっている。

 一方、最近のいこいはシニアや女性の観光客が多く、華やいである。6年前に老朽化した店舗を建て直して、入りやすく明るい雰囲気になっているためでもある。

 アサヌマは終戦後間もない1947年に赤羽で創業。酒屋の一角で、角打ちとしてお客に酒類を提供するようになったのが、いこいの始まりである。当時の赤羽は工場街で、夜勤明けで朝から飲む工員も多かった。今も赤羽にいこいのような朝から飲めるセンベロ酒場が根付いているのは、そういった背景からだ。現在のいこい本店は、本業の酒卸が神谷(東京都北区)に移転したため、角打ちから飲食店へと業態変更されている。

photo 秋葉原店など新しい店では注文にiPadを導入している
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