駐車場シェアakippaが「IoTパーキング」開始 狙いは?社長は元Jリーグ練習生 

» 2018年05月09日 12時46分 公開
[濱口翔太郎ITmedia]

 駐車場シェアリングサービスのakippaは5月9日、IoT(モノのインターネット)の技術を活用したゲート式駐車場管理システム「シェアゲート」を発表した。駐車場のゲートに取り付けた機器がユーザーのスマホとBluetoothでつながって認証し、車で通過する際に画面をタップするとゲートが開く仕組み。決済は事前にキャッシュレスで行うため、現金不足や駐車チケットの紛失リスクなどにも対応する。主に駐車場のオーナー企業向けのシステムで、サービスの効率化が狙いだ。

photo アプリをタップすると解錠する

 駐車場の使用権限をWeb上で付与し、時間帯ごとに管理できる点が特徴。顧客データを取得できるため、マーケティングに生かすことも可能だ。スマホを持たないユーザー向けに、端末のテンキーでパスワードを入力するとゲートを通過できる仕組みも設ける。

 電子錠開発のアート(東京・品川区)と共同開発した。テンキーを活用したサービスは同日から予約を受け付け、10日から開始予定。Bluetoothは12月末に対応予定。

 akippaの審査基準を満たした企業は、端末導入費用、設置費用、保守費用を無料とする予定。基準に満たなかった場合の端末導入費用は20万円、設置費用は5万円(ともに税別、保守費用は無料)。契約期間は2年間。

photo 端末に表示されるテンキー

IoT化で課題を解決

 駐車場シェアリングは、契約のない月決め駐車場やマンションの駐車場と、それを使いたいユーザーをWeb上でマッチングするビジネス。路上駐車などの社会問題の解決につながるほか、コンサートやスポーツの試合などで人が多く、コインパーキングが満車で使えない――といった急な需要にも対応できる点が特徴だ。

 akippaが展開している駐車場シェアリングサービスは、ユーザー登録料を無料とし、駐車料金の50%を手数料として得るビジネスモデル。会員数は約70万人に上り、市場シェア1位を獲得している。

 ただ同社はこれまで、個人宅の空き駐車場、月決め駐車場、コインパーキングなど平置きタイプの駐車場を中心に取り扱ってきた。出入り口にあるゲートの開閉がスムーズにできないことや管理が難しいことがネックとなり、法人が所有するゲート式駐車場には手を広げられていなかった。

 「シェアゲート」はこうした課題を解決し、オフィスビル、商業施設、ホテルなど、ゲート式の空き駐車場を有効活用する目的。akippaはさらなる会員獲得が、駐車場事業者は稼働率の低い時間帯の貸し出しが可能となる。

photo 駐車場の様子

 akippaの金谷元気社長は「ホテルはインバウンドの顧客が多いが、彼らは車に乗らないため、ホテルの駐車場の多くに空きがある。シェアゲートによって、こうしたスペースを有効活用したい」と意気込んだ。

社長は元リーグ練習生

 akippaは2009年創業。金谷社長は幼少期にサッカーを始め、長らくフォワードとして活躍。国体選抜候補に選ばれ、Jリーグのサガン鳥栖やザスパ草津(当時)に練習生として招かれた経歴を持つ。

 ただプロ契約には至らず、ビジネスの世界で生きることを決意。資本金5万円で、ワンルームマンションの一室で起業し、携帯電話やウオーターサーバを法人向けに販売していた。

photo akippaの金谷元気社長

 駐車場シェアリングサービスは、13年に事業に行き詰まったことを機に考案。14年に開始した。女性社員がアイデア出しの会議で「コインパーキング利用時に、現地に行ってから満車を知ることが多く不便だ」と述べたことがビジネスにつながったという。

 金谷社長は「実は当時、シェアリングエコノミーという概念すら知らなかった。このビジネスを始めたのはたまたまです」と笑う。

 サッカーで培った人脈は、akippaのビジネスにも生きている。18年2月には今期からJ1に昇格したV・ファーレン長崎と契約し、ホームスタジアム内の約1400台分の駐車場を同社のシステムを活用した予約制に変更。従来は試合の日に4時間程度の渋滞が発生していたが、ほぼ解消することに成功したという。

 現在の駐車場シェアリング市場は、2位のタイムズ24などが勢力を強めているほか、今夏にはソフトバンクが参入を予定する。競争激化が予測されるが、金谷社長は「当社のUU(ユニークユーザー)数は2位の3倍程度に上る。今後も先回りした施策を展開し、競合に対抗していきたい」と話している。

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