純利益2.5兆円のトヨタが持つ危機感池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/3 ページ)

» 2018年05月21日 06時30分 公開
[池田直渡ITmedia]

 5月9日、トヨタ自動車が2017年度の決算発表を行った。

17年度(18年3月期)のトヨタ連結決算概要 17年度(18年3月期)のトヨタ連結決算概要

 概要の数字を拾い出してみよう。売上高は29兆3795億円で前年プラス1兆7823億円。営業利益は2兆3998億円で前年プラス4054億円。営業利益率は8.2%でプラス1ポイント。当期純利益は2兆4939億円でプラス6628億円。増収増益である。このあたりの数字の見方は先週の記事で書いたので参照していただけるとありがたい。

 さて、台数ベースのほうはどうだろうか? 連結の販売台数は896万4000台でマイナス7000台。ただし、トヨタの持ち株数が半数未満の中国の合弁会社の台数を加えたグループ総販売台数では1025万1000台でプラス19万台となる。ちなみに、トヨタが1000万台メーカーと言われているのはこの中国での合弁会社の台数を加えたもので、純粋にトヨタの台数を見ると上述のように連結の約900万台ということになる。

連結販売台数 連結販売台数

青空は見えない

 さて、ここまでを見ると売上高、営業利益、営業利益率、当期純利益の全ての指標で前年比プラスであり、車両販売台数もグループ全体でプラスと見事な数字に見える。しかしながら、それは前年決算の数字が悪かったことに起因している。

 直近5年の数値を概略で抜き出して見る。

売上高(18年 29.4兆円)

13年 22.1兆円

14年 25.7兆円

15年 27.2兆円

16年 28.4兆円

17年 27.6兆円

営業利益(18年 2.4兆円)

13年 1.3兆円

14年 2.3兆円

15年 2.8兆円

16年 2.9兆円

17年 2兆円

営業利益率(18年 8.2%)

13年 6.0%

14年 8.9%

15年 10.1%

16年 10.0%

17年 7.2%

米国会計基準に基づく連結財務ハイライト(17年3月31日終了会計年度) 米国会計基準に基づく連結財務ハイライト(17年3月31日終了会計年度)

 売上高こそ増えているが、営業利益も利益率も17年に沈んだ数字を若干盛り返しただけで、決して晴れ渡る青空という状況ではない。特に利益率は引っかかる。

連結営業利益増減要因 連結営業利益増減要因

 さて、ではそういう利益率になった原因を探らねばならない。連結決算利益増減要因を見るとそれが分かる。まず為替変動(円安)でのプラスが2650億円。原価改善のプラスが1650億円。諸経費の削減によるプラスが600億円というところだ。

 為替の変動は自動車メーカーにとって、地震や雷のようなもので、現地生産化によってある程度軽減できるが、良きにつけ悪しきにつけ完全に回避する方法はない。だからこの表でも「為替・スワップ等の影響除き:+1250」と実力の部分が明記されているのだ。つまり本年度の決算数値は為替で2650億円も盛られていることを考慮して見なくてはいけない。

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