ただし、スポーツセダンとしての立ち位置を考えると絶対的な運動性能に加えて、路面情報のフィードバック感度は非常に重要である。概念そのものから新しいこの第2世代SKYACTIVメソッドにおいて、これらに影響を与えることなく不快な突き上げだけをうまく消すには、まだ時間が足りていない。15年の乗り心地改善のようなトレードオフでは困るのだ。両立できない時にどちらを切り捨てるのかと言えば、現状の方がベターとも言える。技術はいつも進化の途上にあると割り切り、ある程度のスポーティーさを求めるマツダファンを前提とするなら、高速での突き上げはかろうじて許容範囲だと書いておく。
内外のデザインはアップデートされ、質感は向上した。ここしばらくマツダが力を入れている室内残響の吸収技術によって、音環境も上質感が増している。シートにはベンチレーションが仕込まれ、新型シートで接触面を増やしたことによる熱のこもりも対策された。このベンチレーションは、フラッグシップであるアテンザのドライブ環境改善策として極めて有意義だと思う。というか、面圧を分散させて体とシートを広範囲に密着させるならこの機能は不可欠だと思う。
さて、アテンザの改良をどう評価するか。全体としてはマツダの底力が上がっていることを如実に感じさせるが、その進歩は、当たり前のことだが完璧ではない。積み残しもまたある。それでもDセグメントのセダン全体を見渡したとき、引き続きアテンザは魅力のある1台に仕上がっていると筆者は思う。
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
現在は編集プロダクション、グラニテを設立し、自動車評論家沢村慎太朗と森慶太による自動車メールマガジン「モータージャーナル」を運営中。
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