いずれにせよ、ここで注目すべきは、当時の新聞が、このドイツ発の「人間魚雷」ニュースを、海軍よりも肯定的に報道した点だ。
「日本恐怖病 こんどの戦争には 人間魚雷だ ドイツのが画家が描いた幻影」(読売新聞 1933年12月23日)
むしろ、日本国民を勇気と感動を与え、敵に恐怖を与える自爆を誇らしいと言わんばかりなのだ。これが筆者の思い込みではないことは、「爆弾三勇士」以降も、第二の軍神を探せと言わんばかりに、以下のような自爆美談に紙面が多く割かれていることがよく示している。
「死して果たす戦線の友情 “仇は討ったぞ”凄絶な最期 鬼神も泣く阿修羅戦」(読売新聞 1937年11月8日)
「我子自爆のあの機 お国に返納仕り候 後宮大将泣かせた神鷲の母」(読売新聞 1944年2月18日)
なんとなく、平成日本の「甲子園美談」の記事と雰囲気が似ていることにお気付きだろうか。戦時中の日本は何かと暗くて、軍に仕方なく戦争に付き合わされていたみたいな社会をイメージする方も多いかもしれないが、新聞紙面に限って言えばそんなことはない。
家が燃えても増産を始めた女生徒や、母危篤の知らせを聞いても防護団の持ち場を離れないなんて美談が毎日のように掲載されていた。
誤解を恐れずに言ってしまうと、「甲子園」や『24時間テレビ』を毎日やっている状況だったのだ。
国のために命を捧げる人たちの美談に、「感動をありがとう!」の大合唱が溢れかえる。そのムードにケチをつける人間は「非国民」として、近所の人間から棍棒で追いかけ回された。そんな「感動至上主義」に陥っていたのが当時の日本だった。
先ほどの、ドイツ人画家が描いた人間魚雷について、海軍省の武富邦鼎(たけとみ・くにかね)大佐に問うと、腹を抱えて笑って、「わが海軍としては百中百まで必ず死ぬといふやうな計算は平時人道上から出来ない」と語った。だが、その後に「爆弾三勇士ぐらいの仕事はわが水兵ならやるよ、といふことだけは記憶して置いて頂きたいね」と付け加えている。
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