日本中が今、日大アメフト問題に揺れている。しかしこの間に報道の世界に身を置く者として、非常に考えさせられる出来事があったことも忘れてほしくない。登山家の栗城史多(くりき・のぶかず)さんがエベレスト登頂に挑戦したものの失敗し、下山中に死亡したことだ。
世界最高峰のエベレストに自身初登頂を目指していた栗城さんが遺体で発見されたのは5月21日。今月20日には自身のFacebookで7400メートルに到達したことを明かしていたものの、翌21日に体調が悪化したことを理由に下山すると書き込んでからは無線連絡が途絶えていた。標高6400メートルのキャンプ2を発った捜索隊が栗城さんの遺体を発見したという。
詳しい死因は明らかになっていないが、彼の死を悼む人々と対照的に登山家の有識者や関係者からは一様に「無謀な挑戦のゆえに起こってしまった悲劇」として厳しい声も次々と上がっているのが現状だ。今回で8度目の挑戦となったエベレスト登頂において栗城さんは最難関とされる南西壁ルートを選択した上で単独無酸素という極めて困難な条件のもと歩を進めていた。
この南西壁ルートとはエベレスト登頂を果たすための複数の登山道の中で極めて困難なルートだ。ネパール側からの南東稜ルートと中国・チベット自治区側からの北陵ルートは難易度が比較的低く、ここから多くの人がエベレスト登頂を成功させている。しかし南西壁ルートは文字通り、南西に存在する壁を登る非常に危険なルート。1975年に英国のダグ・スコットがエベレストの南西壁初登頂に成功したが、単独ではなかった。このルートで単独無酸素の登頂を成功させた者はこれまで1人もいないとされている。
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