生成AIでデジタル戦略はこう変わる AI研究者が語る「一歩先の未来」
【開催期間】2024年7月9日(火)〜7月28日(日)
【視聴】無料
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【概要】元・東京大学松尾研究室、今井翔太氏が登壇。
生成AIは人類史上最大級の技術革命である。ただし現状、生成AI技術のあまりの発展の速さは、むしろ企業での活用を妨げている感すらある。AI研究者の視点から語る、生成AI×デジタル戦略の未来とは――。
日立製作所の業績が好調だ。2023年3月期まで3年連続で最高益を更新し、2024年3月期の連結業績予想でも当期純利益5300億円を見込む。株価も2023年8月にバブル崩壊前に付けた上場来高値を35年ぶりに更新した。
この好調の背景には、日立としては史上最大の赤字からの復活があった。リーマンショック直後の2009年3月期決算では7873億円の最終赤字を計上。これは当時、日本の製造業でも過去最大の赤字だった。だがその後、このままでは立ち行かなくなる、との危機感から、事業領域を大きく変えてV字回復を果たす。その戦略の中心となっているのが、DXとグローバル化だ。
「シリーズ 企業革新」では、好業績でまい進する企業や、自己変革を通じて成長の芽を作った企業の裏側を深堀りしていく。1回目は「シリーズ 企業革新」日立編として、同社が史上最大の赤字を乗り越え、再成長を果たした裏側に迫る。
初回でスポットを当てるのは2016年にスタートし、今や日立の売上高で「4分の1以上」を占めるLumada(ルマーダ)事業だ。
Lumadaは「Illuminate」(照らす・解明する・輝かせる)と「Data」(データ)を組み合わせた造語だ。日立の先進的なデジタル技術を活用したソリューション、サービス、テクノロジーの総称となっている。顧客のデータに光を当て、新たな知見を引き出すことによって、経営課題の解決や事業成長に貢献することを目指す。
日立が経営資源を振り向ける巨大事業、Lumadaのビジネスモデルと今後の成長見通しについて、デジタル戦略の中核を担う日立デジタルの谷口潤CEOにインタビューした。
「Lumadaができたころは、『Lumadaはいくらで売っているのですか』と聞かれたことがありました(笑)。当初は難解だったかもしれないですし、説明するのも難しかったですね。プロダクトというよりは、私たちのビジネスモデルであり、一つの考え方だと思っています」
谷口氏は、Lumadaが始まった当初をこう振り返る。もともとLumadaは、電力や鉄道など社会インフラを最適に動かす制御や運用の技術であるOT(Operational Technology)やITの実績と、最新のテクノロジーを搭載したIoTプラットフォームとして出発した。その後は、顧客の課題解決に向き合う中で、日立の強みを生かす形に進化させてきた。
「テクノロジーが非常に速いスピードで進化していく中で、何かを実現するための手段はどんどん変わってきました。その状況でも、お客さまや社会の課題は常に存在し続けています。その課題を、社会インフラを堅牢に支える当社のコアを使って解決していくこと、さらに私たちの強みでもあるOT、IT、プロダクトを組み合わせて、目の前にある課題を解決していくことを、私たちにとっての普遍の価値と定義しました。その価値を生み出すために、Lumadaではフレームワークを作って、中身を常に変化させながら進化しています」
進化を続けたLumadaは現在、事業を成長させるための4つのステップを確立している。
最初のステップは顧客の課題を理解するデジタルエンジニアリング。ユーザーや顧客の視点を起点にソリューションを見いだすデザイン思考によって課題を見つけ、IT、OT、プロダクトで解決方法を創出する。
次のステップが、課題を解決するシステムをクラウド上などに構築して実装するシステムインテグレーション。続くステップであるコネクテッドプロダクトでは、システムとプロダクトをつなげて運用の遠隔化や自動化を行う。
4つ目のステップのマネージドサービスは保守にあたる。システムの運用を高度化させて、顧客自身が事業に注力できるようにすると同時に、蓄積された運用データを分析して新たな課題を見つける。このサイクルをデータで回すことによって価値を提供し続けるのが、Lumadaの循環型のビジネスモデルだ。
「必ずデジタルエンジニアリングから始まるわけではありませんが、一周ぐるっと回していくと、マネージドサービスのところにデータが集まってきて、いろいろなインサイトが出てきます。このインサイトを使って、次のサービスデザインを考えます。このサイクルを2周目、3周目と回すことで、お客さまのビジネスやサービスのレベルが上がり、お客さまの顧客に対してもより深く刺さるビジネスモデルを構築することが可能になります。段階的にスパイラルアップして進化していくことを、お客さまとともに追い求めているのがLumadaの現在のフェーズです」
日立はLumadaに加え、DXとグローバル化を中心とした戦略によっても再成長を遂げている。2023年3月期の連結決算では6451億円の純利益を計上して、3期連続で最高益を更新した。2024年3月期は子会社の再編などによって減収減益を見込むものの、当初の予想を上方修正して純利益は5300億円となる見通しだ。
日立グループは2024年度中期経営計画で「社会イノベーション事業でグローバルリーダーになる」と目標を掲げ、デジタル、グリーン、イノベーションの3本柱で事業を加速する方針を明らかにしている。
その目標を達成するため、日立グループを横断してグローバルデジタル戦略を策定し推進する組織として、2022年4月に米シリコンバレーに設立されたのが日立デジタルだ。設立と同時にCEOに就任した谷口氏は、社会課題の解決を目指す創業以来の方針が、ここにきて成長の原動力になっていると説明する。
「日立製作所は1910年に、茨城県日立市にあった銅山の修理工場として創業しました。当時は鉱山を支える機械がほぼ輸入品だったことから、国産初の電気モーターを作ったことが始まりです。それ以来、社会課題をいかに解決していくかにフォーカスをして多様な事業を展開しています。現在は社会情勢の変化によって、気候変動問題に対応するための脱炭素や、個人にとっての心や体、それに社会がいい状態になるウェルビーイングなどが求められるようになってきました。この変化により、グループの方針である社会課題の解決がより大きなビジネスになってきて、今の業績を支えていると感じています」
社会情勢に変化が起きる一方で、日立が取り組んできたのが大胆な社内改革だ。日立は1990年代後半から3度にわたって大幅赤字を計上。そこから大規模な事業構造改革であるスマトラプロジェクト(Hitachi Smart Transformation Project)などを進めてきた。
「業績が苦しかった頃は、いろいろな挑戦をした時期でもありました。ともすれば全方位的、あるいは八方美人的だったかもしれません。そこからV字回復ができたのは、これまで以上に社会イノベーションにフォーカスしたことが理由の一つです。もう一つの理由には『IT×OT×プロダクト』によって日立のユニークネスを出していく戦略に絞ったことが挙げられます。その戦略を推進しているのが、まさにLumadaなのです」
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