増加する「認知症」と「資金トラブル」、対応迫られる金融機関保有資産は215兆円(2/3 ページ)

» 2018年12月18日 07時00分 公開
[ロイター]

<増える認知症患者の保有金融資産>

厚生労働省の推計では、認知症患者の数は、2012年時点で462万人。2030年には744−830万人と予想されている。全人口の6−7%に匹敵する規模だ。

経済協力開発機構(OECD)は、日本での認知症患者数が2037年に全人口の3.8%と推計。OECD加盟国の中で一番高く、加盟国平均の2.3%を大きく上回る。

第一生命経済研究所によると、2030年まで、認知症患者の保有する金融資産が215兆円に上ると予想している。

企業や金融機関も、認知症患者の保有する金融資産への対応を迫られている。

典型的な例として、取引後に認知症を理由に家族や介護者などから契約の解消を求めらるケースがある。京都府立医科大学大学院の成本迅教授は、このような事例が今後、増えると予想する。

成本教授などの調査では、既に認知症患者を抱える家族の3割程度が、無駄な金品の購入など、経済的な損失を被ったことがあると回答している。

金融機関の窓口でも、ATMの使い方がわからない顧客、同じ質問を何回も繰り返す顧客など、認知症と思われる顧客への対応を迫られることは、日常茶飯事になりつつある、と複数の金融関係者は明かす。

認知症は、脳の疾患に起因する記憶や認知能力障害の結果、日常生活が営めなくなる状態だ。アルツハイマー病が全体の3分の2ほどを占めるが、それ以外に多くの種類があり、症状も一様ではない。

多くの場合、計算や時間の認識などに障害が出ることから始まり、さらに病気の進行が進むと、場所や人の認識もできなくなるということが多い。

Copyright © Thomson Reuters