増加する「認知症」と「資金トラブル」、対応迫られる金融機関保有資産は215兆円(1/3 ページ)

» 2018年12月18日 07時00分 公開
[ロイター]
photo 12月17日、「電子レンジって何――」。東京都内に住む大久保英一さん(71)が、妻の由美子さん(68)に、食べ物を電子レンジで温めるように頼んだ時の返事だ。写真は都内で10月撮影(2018年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 17日 ロイター] - 「電子レンジって何――」。東京都内に住む大久保英一さん(71)が、妻の由美子さん(68)に、食べ物を電子レンジで温めるように頼んだ時の返事だ。

由美子さんが認知症と診断されてまもないころだった。適切な言葉が思い出せなくなり、25年間続けた着付け教室の講師を続けることも難しくなっていた。

それ以来、介護する英一さんにとっても、由美子さんにとっても、日々の生活はさまざまな苦労がある。金銭をどう管理していくのか、ということも社会的に大きな問題の1つだ。

京都市の社会福祉士、上林里佳さんは、これまで認知症の患者が、明確な理解のないまま、自分の銀行口座から大金を引きおろす場面に何回も遭遇してきた。

例えば、ある90代の女性は、孫のひとりに、相続のために資金が必要だと思い込ませられ、合計2000万円以上の資金を複数の金融機関から引き出し、その孫に渡していた。

「9引きおろした、などと言うので、いったい何のことかと思ったが、実は札束の数のことだった」という。

明らかな経済的虐待の事例と見られたため、行政や弁護士などと相談し、歩くのもおぼつかない女性を連れて、金融機関を一軒一軒回ったという。

「一部の金融機関は、それ以上の被害を防止するための協力を惜しまず、要請後の出金は止められた。ただ、非協力的な金融機関もあり、必要な書類さえ形式的に整っていれば、出金は止められない、という姿勢だった」と上林さんは当時を振り返る。

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