トヨタ自動車が配偶者手当を廃止し、子ども手当を4倍に引き上げることで労働組合と大筋合意したという。ネットでは「時代の流れ」と歓迎する意見が多い。
読売新聞によると、同社は来年1月以降、段階的に配偶者手当(月額1万9500円)を廃止し、子ども手当を1人当たり一律2万円に引き上げるという。
従来は年収103万円以下の配偶者を対象に手当を支給していた。だが現在は共働き世帯の方が多くなっているため、見直すことにしたという。
トヨタは女性社員比率の向上も掲げており、2014年度新卒採用は事務系で40%、技術系で10%が女性だったという。男性社員を前提としている配偶者手当は不公平だという考えもありそうだ。子育て世代への支援を厚くするという社会の流れにも合致している。
配偶者控除の見直しには「103万円と130万円の壁」という背景もある。年収が所得税の配偶者控除の対象となる103万円と、社会保険上の扶養家族として保険料を払わなくてすむ130万円を超えると、むしろ手取額が減ってしまう。これが女性の就労を阻む2つの“壁”になっていると指摘されてきた。
企業の配偶者手当も103万円と130万円を基準にしている場合が多く、これが“壁”を高くしているとして社会的な課題に浮上していた。専業主婦がモーレツ社員の夫を支える高度成長期の名残りとも言える仕組みだが、今や妻が無職という夫婦は働き盛り世代では4〜3割程度にまで減っている(男女共同参画白書より)。
ただ、見直しに着手したトヨタのような企業は少数だ。女性の活躍を掲げる安倍晋三首相は「隗より始めよ」と民間に先駆けて国家公務員について見直すよう指示していたものの、人事院は2015年度勧告では見直しを見送る方針になった──と各紙が伝えている。「時期尚早」と判断したという。急激な変化は家計に与える影響も大きいためだ。
トヨタの労使合意を受けて、Twitterなどでは「画期的だ」「トヨタという大企業が決断したことは大きい」と評価する声が多い。一方、「専業主婦の肩身が狭くなる」「不妊症などで子供がいない夫婦には気の毒」といった声も上がっている。
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