今からでも遅くない? 年収200万円と800万円の分かれ道:金曜インタビュー劇場(藤原和博さん)(2/5 ページ)
サラリーマンの給料が減っていく――。このような話を聞くと、不安を感じる人も多いのでは。人口減少などの影響を受け、大幅な経済成長が見込めない中で、私たちはどのように仕事をしていけばいいのか。リクルートでフェローとして活躍された藤原和博さんに聞いた。
藤原: この流れは止めることができないでしょう。高度経済成長期以降、多くのサラリーマンは年収400万〜800万円を手にしていました。いわゆる“中間層”ですね。働く人でありながら消費者でもある……1億総消費者の時代だったので、日本は国内需要だけでかなり儲(もう)かっていて、その利益で海外展開を進めることができました。
そして、海外でも儲かったので、そのお金を使って設備投資などをして……といった感じで、経済はうまく回っていた。しかし、これからは違う。年収200万円〜400万円くらいの人と年収800万円以上の人――この2つの層の格差が開いていくのではないでしょうか。
土肥: なぜそのような動きになるのでしょうか?
藤原: それは「成長社会」から「成熟社会」への変化が深く関係しているんです。
土肥: あ、前回、お話いただいたテーマですね。戦後の焼け野原から、日本の経済はジグザグしながらも右肩上がりで成長してきました。しかし、バブル経済崩壊の影響を受けて、金融機関がバタバタと倒れていった。それまでのことを藤原さんは「成長社会」と呼んでいて、ひとことで言えば「みんな一緒」という意識が強い世界だった。学校の先生や親の言うとおりに、“いい子”にして、“偏差値の高い大学”に入学し、できるだけ“大きな会社”に就職できれば、それなりの年収を手にすることができた。そうしたルートを、みんな一緒に走っていたんですよね。
藤原: はい。当時は「情報処理力」が求められていました。例えば、ジグソーパズルのピースには必ず“正解”があって、それをいかに早く見つけるかという頭の回転の速さが求められていたんです。
しかし、1997年に山一証券などが経営破たんしてから、成長社会が崩れていきました。次に、やってきたのが「成熟社会」。今の時代は、身に付けた知識や技術をさまざまに組み合わせて、みんなが納得できる解……すなわち“納得解”を導き出さなければいけません。ひとつの正解をできるだけ早く見つけるのではなく、頭の柔らかさが重要になってきました。この、納得解を作り出す力のことを私は「情報編集力」と呼んでいます。
関連記事
- カーシェア事業で、なぜ「パーク24」だけが黒字化できたのか
カーシェアリング事業の早期黒字化は難しいといわれている中で、パーク24が事業を始めてわずか5年で黒字を達成した。その理由を探っていくと、興味深い話が……。 - 7割が「課長」になれない中で、5年後も食っていける人物
「いまの時代、7割は課長になれない」と言われているが、ビジネスパーソンはどのように対応すればいいのか。リクルートでフェローを務められ、その後、中学校の校長を務められた藤原和博さんに聞いた。 - ジャポニカ学習帳の表紙から「昆虫」が消えた、本当の理由
ジャポニカ学習帳の表紙といえば、「昆虫」の写真を思い浮かべる人も多いだろうが、数年前に昆虫が消えた。教師や保護者から「昆虫が気持ち悪いから変えてほしい」といった要望があって、発売元のショウワノートが削除したというが、本当にそうなのか? - なぜ「ココイチ」の味は“普通”なのに、トップを独走しているのか
「カレーハウスCoCo壱番屋」(ココイチ)を運営している壱番屋の業績が好調である。市場をみると、ココイチの店舗数は1000店を超えているのに、2位のゴーゴーカレーは80店ほど。なぜココイチはここまで「独走」しているのか。同社の取締役に聞いたところ……。 - 日本人のここがズレている! このままでは「観光立国」になれません
「訪日客が1300万人を突破」といったニュースを目にすると、「日本は観光立国になったなあ」と思われる人もいるだろうが、本当にそうなのか。文化財を修繕する小西美術工藝社のアトキンソン社長は「日本は『観光後進国』だ」と指摘する。その意味とは……。 - なぜ小さな会社が、“かつてないトースター”をつくることができたのか
バルミューダがこれまでになかったトースターを開発した。最大の特徴は、表面はさっくり焼けて香ばしく、内部は水分をしっかりと閉じ込めてふわふわ。そんな食感を楽しむことができるトースターを、なぜ従業員50人の会社がつくれたのか。 - 転職に成功する人、失敗する人――どこに“違い”があるのか
景気の影響を受けて、転職の求人数は右肩上がり。「自分もそろそろ……」と思っている人もいるだろうが、“転職で成功する人、失敗する人”にはどのような“違い”があるのか。リクルートでフェローを務められ、その後、中学校の校長を務められた藤原和博さんに聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.