「着物業界」が衰退したのはなぜか? 「伝統と書いてボッタクリと読む」世界:スピン経済の歩き方(2/4 ページ)
訪日観光客の間で「着物」がブームとなっている。売り上げが低迷している着物業界にとっては千載一遇かもしれないが、浮かれていられない「不都合な真実」があるのではないだろうか。それは……。
着物のほとんどは「外国産」
もちろん、西陣織などの「純国産着物」もないわけではないが、それらはほんのひと握りしかない。
農林水産省によると、2014年の養蚕農家はわずか393戸で、生糸の生産量も27トン足らずとなっており、ピーク時の1934年(4万5000トン)から1600分の1に減少し、もはや「絶滅寸前」といっても差し支えない。
つまり、流通する「日本の着物」の大半は、「中国産の糸」を用いて日本で仕立てたものか、ベトナムなど海外の工場で仕立てられたものだという現実があるのだ。
着物に対してそこまで思い入れのない日本人なら「そんなもんでしょ」と特に驚くこともないかもしれない。が、日本文化に憧れ、遠路はるばるやって来た外国人観光客はどうだろう。「ワオ、ジャパニーズキモノだ」と喜んで買い求めたものが、実は「外国産」だと分かったら、ガックリしてしまうのではないか。要するに、中国人だろうが、欧米人だろうが、大半の外国人観光客がレンタルしたり、土産物として購入したりする「着物」のほとんどは、「外国産」なのだ。
想像して欲しい。もしあなたが長い歴史を誇る国へ旅行して、そこでその国の人々が誇らしげにアピールする「伝統工芸品」を土産に買ったとしよう。
ベネチアン・グラス、ペルシャ絨毯……なんでもいい。その「伝統工芸品」を日本に帰国して、包装をとって細かいところをよく見つめてみると、そこにはなんと「メイド・イン・チャイナ」というタグが――。
道端にあるようなバッタモン屋で、二束三文で買ったモノならまだあきらめもつくが、格式のあるような店で購入し、売り子も「これが我が国の伝統なんです」なんてもっともらしいセールストークをしていたら、「詐欺じゃないか」とメラメラと怒りがこみあげるのではないか。
まさしくそのような不信感が、2000万人にも届こうという訪日外国人観光客の間に広がってしまう恐れがあるのだ。
「そんなことを言っても、日本の本物の職人がつくった着物はすごく高いんだからしかたがないだろ」なんて声が聞こえてきそうだが、アトキンソン氏はそのような考えこそが、日本人の間でも「着物」を疎遠にさせ、着物業界の衰退を招いたとみている。
西陣織は1966年(昭和41年)に出荷量がピークを迎え、そこから減少に転じていくのだが、出荷金額のピークはその10年後というタイムラグが出ている。和装振興研究会の報告書を引用すれば、「出荷数量の減少を受けて、供給側が高付加価値商品にシフトしたことがうかがえる」のだ。
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