マツダとボルボがレストアプログラムを提供する意義:池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/5 ページ)
先週、幕張メッセで開かれたイベント「オートモビル カウンシル」で2つの話を聞いた。この取り組みは、今後「自動車文化」を本当に豊かにしていくかもしれない。
8月5日〜7日、幕張メッセで新しい自動車のイベント「オートモビル カウンシル」が開催された。主催者の説明によれば「国産メーカー、海外メーカー、そしてヘリテージカー専売店が手を組み『あの名車』と出会う、一大イベント」とのこと。パリで開催される「レトロモビル」に範を取ったものだと言う。
レトロモビルは、原則的に旧車指向のイベントで、恐らく世界の自動車ショーの中で最も珍車の出現度が高いイベントだろう。国際格のモーターショーのような、メーカー主導の商業的ビジネスショーというよりは、オーナーズクラブや非メーカー系ショップが盛り上げるフェスティバルだ。物の売買も行われていて、ある意味ではモーターショーより営業的な側面もあるが、好事家によるフリーマーケットのような雰囲気で、確かに文化の香りがする。
さて、オートモビル カウンシルが日本にも自動車文化を……という文脈で考えられたのはよく分かる。ただ、古いクルマ=自動車文化と言われると、それはどうも短絡的に思える。
筆者はかつて自動車趣味系の雑誌の編集部にいたし、自分でもウェーバーキャブ付きの古いクルマを長年所有していたので、個人としてはそういうクルマは好きだ。ただ、誤解を恐れずに言えば、旧車趣味の世界はどこか金満的で、持っているクルマで序列がついてしまうような底の浅さがいつも気になる。別に古いクルマを持っていることは偉くない。むしろ環境面を考えると、昭和51年(1976年)の排ガス規制以前のクルマ1台で、最新のクルマ100台分レベルの環境破壊を行ってしまうという現実も自動車趣味人は知るべきだと思う。
さはありながら、褒められたことをしているわけではないことを知りつつ、それでも好きな人たちのやむにやまれぬ非合理的な情熱で盛り上がってしまう何かこそが文化なのであって、現世利益的なステータスを追うならただの金満自慢である。
ちょっと脱線するが、古いクルマの追加課税は概念的には賛成だ。自分が趣味を楽ませてもらうためだ。誇りを持って払うべきだと思う。ただし1976年、1978年、2000年と大きな規制値の変更があった年次に合わせる課税ステップであるべきだろう。それが一律に初年度登録から13年で割り増しというのは、建前に対して課税法がおかしいと思う。「新車が買えない貧乏人に課税するな」は納得がいくが、「自動車文化の振興に貢献しているのだから課税するな」はなしだろう。文化は金がかかる。払ってこそ文化である。
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