出光が恐れているのは何か、昭和シェルが嫌っているのは誰か:スピン経済の歩き方(2/4 ページ)
出光興産と昭和シェル石油の合併が難しくなっている。国内ガソリン市場が縮小する中で出光にとってシェルとの統合は決して悪い話ではない。それなのに、なぜ出光の創業家は合併に反対しているのか。
創業家が心配している「40年戦争」
こんな一触即発の空気のなかで「サウジ系企業」とくっついたら、1952年から信頼関係を築いてきたイランからそっぽを向かれるのではないか、ということを創業家側は懸念しているらしい。
ただ、そのようなビジネスリスクよりも、創業家が心配していることがほかにあるのではないかと思っている。
それは「40年紛争」だ。
よく言われることだが、出光佐三の経営理念である「大家族主義」を掲げる出光には、労働組合というものが存在しない。
もともとはタイムカードも定年退職も必要なし、社員は残業手当を受け取らない、など「出光の七不思議」と世間から呼ばれるほどユニークな人事労務制度があったが、2000年の外部資本導入と上場によって、次第にいまの時代にそぐう制度へと見直しが行われていったが、「労働組合」に関しては今にいたるまで結成の気配はなかった。
では、「婚約相手」の昭和シェルはどうかというと、もちろんある。しかも、そんじゃそこらの組合ではなく、数多の労働争議を乗り越えてきた百戦錬磨の闘士たちの集団だ。
「全石油昭和シェル労働組合」のWebサイトには「闘いつづけて40年」という言葉とともに略史が紹介されている。1949年にシェル石油本社経理部員を中心に組合が結成されてから、賃上げ闘争、住宅手当闘争などを続けてきた。
会社側との対立が一気に激化するのが1970年から。組合員だからということでの不当配置や賃金差別などがあり、組合敵視が始まったという。もちろん、労組側もストや抗議で抵抗し、2000年には、昭和シェルの大阪支店の従業員6人が組合員だという理由で、賃金昇給差別を受けたとして大阪府地方労働委員会に申し立て、救済命令が下されたことを皮切りに、ほかの労働争議でも「勝利命令・判決」が相次いだ。
そして、2010年には、ついに会社側から和解交渉を引き出し、40年間続けていた労使紛争一括解決和解成立したのだ。
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