「残業(長時間労働)は仕方ない」はもうやめよう:新人記者(応援団長)が行く(2/3 ページ)
電通の新入社員が過労自殺するという事件が起こり、話題になっている。政府はいま「働き方改革」を進めて長時間労働の是正に取り組んでいるが、繰り返されてきたこの問題を本当に解決できるのだろうか。労働問題の専門家、常見陽平氏に話を聞いた。
「残業は仕方ない」で終わらせるな
常見: 現実問題として残業(長時間労働)を完全になくすことは難しいでしょう。なぜこれまで残業がなくならないのかを突き詰めると、残業が企業にとって合理的だからです。ある人の仕事がとても忙しくなったとき、その仕事を任せられる同じスペックの人を雇うことの方が大変ですからね。もちろん、残業を肯定しているわけではありません。それによって体を壊したり、死んでしまう問題があるのですから。
しかし、残業をさせた場合、企業はその人対して割増賃金(残業代)を払うくらいのペナルティしかない(80時間以内であれば)。しかも、労働者にとっては残業代が良い小遣いになったりもします。
こういう構造にメスを入れて「残業は仕方ないもの」ではなく「残業は絶対によくない」という空気を社会全体で作っていかなければなりません。
全員がバリバリ働きたいわけではない
鈴木: 具体的にはどんな取り組みが必要になるのでしょう。
常見: 会社の中でバリバリ働きたい人と、そうではない人をきちんと分けていくべきしょう。そもそも社員全員が必ず競争しなければならない環境っておかしいですよ。
鈴木: バリバリ仕事をする人より稼げなくても、プライベートの時間を十分に確保したい人向けの働き方も提供していく必要があるということですね。
常見: IT企業のサイボウズなどが良い事例ですね。同社では「ワーク重視型」と時短勤務ができる「ライフ重視型」のコースを用意しており、本人が希望する働き方を選ぶことができます。こうした取り組みによって、離職率は28%(2005年時点)から4%に減少し、女性社員の割合も増えたそうです。
鈴木: それは良い取り組みですね。
常見: 本来、非正規雇用のメリットはそういう自由な働き方ができる部分にあったのですが、結局、非正規も含めて過剰に働かせているんですよね。フリーランスという働き方もあるけど、それこそ残業代などのあらゆる保障がないわけで……。
昔から「会社に捉われない自由」か「会社による安定」どちらをとるか――などと言われてきましたが、今は両方ありません。会社にいてもボロボロになってしまうわけですから。
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