日本の生産性が低いのは「たばこ後進国」だから?:スピン経済の歩き方(2/5 ページ)
数年ほど前から「日本企業の生産性が低い」といった話をよく耳にする。労働時間を短縮したり、効率化を図ったり、さまざまな取り組みをしているが、喫煙者の問題はあまり話題にならない。仕事中に「ちょっと一服」と言って、何度も離席する人は生産性がいいのだろうか。
たばこの「社会的コスト」
なんてことを言うと、「俺様はヘビースモーカーだけど、何十億というビックプロジェクトをまとめてむしろ会社に貢献しているぜ」なんて方から怒りのクレームが寄せられそうだが、そういう「個」のエピソードを「全体」に適応させてしまうのは、日本の悪い癖だ。
例えば、戦前のベルリンオリンピックで、日本統治下の朝鮮出身の選手がマラソンでアジア人初の金メダルをとった。これは個人の業績だし、日本人でもないわけなのだが、当時の日本軍はなぜか「日本民族の健脚は世界一」とか言い始める。この勘違いが人命軽視の無謀な行軍につながった。個人の業績を都合よく「日本人全体の業績」にすり替えてしまうのだ。
それと同じことで、会社に利益をもたらすヘビースモーカーがちょいちょいいたとしても、「喫煙者が生産性が高い」ということにはならないのだ。
むしろ、「日本全体」を見てみると、たばこの「社会的コスト」が日本経済にも重くのしかかっている可能性さえある。
日本の生産性が他の先進国と比較して圧倒的に低いというのは、この数年いたるところで言われている。
その原因としては、長時間労働信仰とか、無駄に長い会議とか、「飲み二ケーション」に代表される勤務時間外の付き合いなどさまざまなものが挙げられているが、「喫煙」の影響も皆無とは言い切れないのである。
例えば、公益財団法人、日本生産性本部が2016年12月に発表した「ODCE加盟諸国の時間当たり労働生産性2015年」によると日本は20位となっていた。では、トップ5を見てみると、ルクセンブルグ、アイルランド、ノルウェー、ベルギー、米国という順番なのだが、実はこれらの国にはある共通点がある。
日本と比較して圧倒的に喫煙率が低いのだ。
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