北朝鮮が攻撃できない、米国も攻撃できない背景:世界を読み解くニュース・サロン(3/4 ページ)
北朝鮮が攻撃してくるかもしれない――。何度もミサイル実験を繰り返されると、多くの人がこのような不安を感じるかもしれない。では、米国政府はミサイル問題をどのようにとらえているのか。実は……。
米国が攻撃しない背景
もちろんトランプも先制攻撃は現時点で考えていない。米政府関係者はいろいろな発言をして話題を振りまいているが、実際のところトランプ政権の方針ははっきりしている。北朝鮮に金正恩体制を崩壊させるつもりはなく、とにかく考えられるすべての制裁を科し、圧力を与え、最終的には対話で問題解決したいと考えている。ただ北朝鮮を核保有国だと絶対に認めるつもりはないし、手の内を明かしたがらないトランプが「先制攻撃はしない」と公言することは絶対にない。
「攻撃しない」もうひとつの理由として、中国の存在がある。米国による北朝鮮攻撃は、中国が何としても阻止すると見られている。北朝鮮が崩壊したら、その空白には韓国が入り、中国のすぐ隣で米軍が陣取ることになる。それは中国としては避けたいからだ。
こうした話を前提にすると、日本の報道を見ていて違和感をもつことがある。メディアの中には、米国が北朝鮮を軍事攻撃するとあおり、印象操作したい人たちが少なくないということだ。
雑誌やインターネットの記事でも、「先制攻撃」「Xデー」といった記事をよく見かける。具体的にいくつかの日付を挙げて、先制攻撃が行われると書いている記事もある(ほとんどが何も起きずに過ぎてしまっているが)。インターネットで「北朝鮮 Xデー」と検索すれば、さまざまな日程が指摘されている。
また米軍が北朝鮮への「先制攻撃準備か」「先制攻撃の準備をしている」といった記事も見かける。米メディアを引用しているものもあるが、米軍は常に他国へ攻撃できる体制があり、日ごろから攻撃の準備をしている。また金正恩委員長を排除する「極秘作戦」も取りざたされるが、これも当然のことながら、どんな作戦をするにしても特殊部隊は準備を怠っていない。もっと言えば、メディアにその極秘作戦が進められているとの情報が漏れるとは考え難い。すでに特殊部隊は韓国に入っているという話もあるが、それがバレているとはあまりにも間抜けだ。100歩譲って、それをわざとメディアに漏らして、北朝鮮を揺さぶっている可能性はあるが。
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