核シェルターが売れているのに、なぜ業者は憂うつなのか:世界を読み解くニュース・サロン(3/4 ページ)
北朝鮮が6度目の核実験を実施した。自分の身を守るために「核シェルター」の販売数が伸びているそうだが、業者からは困惑の声も。どういうことかというと……。
核シェルターは売れているのに、業者の表情はさえない
こうした国と比べると、日本は核シェルター後進国だと言える。そこで、北朝鮮の核実験の直後に、日本で核シェルターを販売する織部精機製作所に話を聞いてみた。
同社の担当者に「核シェルターが売れているようですが」と聞くと、「うーん」という拍子抜けする返事が戻ってきた。話を続けると、どうも単純に「売れている」では済まないようだ。
メディアなどでは確かに、「2017年は2016年に売れた数と比べて37倍になっている」「通常の年間注文数が6件程度なのに2017年4月だけで注文は8件」などと報じられている。どういうことなのだろうか。
担当者によれば「確かに2017年の4月以降は問い合わせ、販売が増えている」という。しかしマスコミの問い合わせに困惑している、としてこう続けた。「取材の人は『何%増えましたか』『何台売れましたか』と必ず聞いてくるのですが、ほとんど売り上げがなかったモノが急に37台も売れるようになったことで、『シェルターがバカ売れしている』みたいに報じられてもねえ」と話した。要するに「数は知れているんですよ」と主張する。
実際に販売された数を聞くと、例年以上に数は出ているようだ。これまでなら、核シェルターの部屋と換気装置をセットにしていたが、問い合わせの多さと、注文からシェルターを完成するまで、役所への許可申請なども含めて4カ月半もかかることから、2017年は換気装置だけを別売りすることにしたという。
「62万円のシェルターに使う6人用の小さな換気装置は今年4月から50台ほど売れました。170万円の13人用が9台、25人用が10台、50人用が12台、400人用の換気装置の注文もありました。昨年から増えているのは確かですが……」
売り上げは伸びているのに、担当者はなぜ浮かない様子で話を続けるのか。その理由はその後の発言から分かった。
「今回のミサイル実験についての子どもたちの避難訓練を見ましたか? 屈んで頭をかかえるという訓練です。あれが日本の現実なんです」
その様子は、同社が取材を受けた海外メディアの映像にもシニカルに含まれており、織部精機製作所の公式Webサイトにもアップされている(参照リンク)。
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