グーグル&Uberつぶしのトヨタ・タクシー:池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/4 ページ)
現在開催中の「第45回 東京モーターショー」。その見どころについて業界関係者から何度も聞かれたが、その説明が面倒だった。自動運転車や固体電池のクルマとかなら「ああそうですか」で終わるのだが、今回はタクシーなのだ。
トヨタのコネクティッドシステム
トヨタ自慢のコネクティッドシステムの本格運用がついに始まる。このタクシーには「Googleストリートビュー」の撮影カーの仕組みよりさらに高度な道路交通情報収集機能が装備されている。トヨタ自慢のコネクティッドシステムの実例がついに明らかになった。このタクシーには「Googleストリートビュー」の撮影カーの仕組みよりさらに高度な道路交通情報収集機能の追加装備が可能になっている。前方走行画面、速度、操作などだ。
その収集情報の全容は開示されていないが、「TransLog」と呼ばれるこの通信型ドライブレコーダーによる収集情報の全容は開示されていないが、例えば、ワイパーが動いていればその作動速度でその地域の降雨量なども推測できるはずだ。運転データも取っているはずなので、ドライバーのうまい下手も推測できる。どこで道路工事が行われているか、あるいは終わったか。交通事故処理による規制だってかなりリアルタイムで把握できる。ナビが誘導するルートも変わって、交通全体が効率化される。そしてとんでもない密度の情報が集まることになる。今後事務レベルでの調整がついてTransLogが全てのJPN TAXIに搭載されれば、とんでもない密度の情報が集まることになる。タクシーという名前の自走型センサーがが24時間365日道路を走り回り、道路レベルではなくレーンレベルの流れのリアルデータを動画込みで送信し続けるのだ。道路交通情報センターの情報なんて一気に骨董品になる。
世界の情報収集の最先端は言わずと知れたグーグルだが、グーグルがどんなに頑張っても、24時間365日の道路情報データ収集をすることは、少なくとも画像に関しては不可能だ。もちろん「Googleマップ」をナビに使ったり、「Android Auto」をユーザーに使ってもらえば、マーケットに誘導される形でならある程度可能だ。しかし車載カメラや車両制御コンピュータの情報を有線接続で吸い上げさせることは難しいだろう。セキュリティの観点から、「Android Auto」にも接続させたくないエリアは存在し、自動車メーカーは回路そのものを別系統で維持したいと考えているからだ。
ところが、トヨタにはそれをタクシーに導入することで強制的に実現できてしまう。しかもグーグルは自分で撮影カーを1台ずつ作り、ドライバーを雇わなくてはならないが、トヨタは走り回る人たちの側がお金を払ってクルマを買ってくれた上に、タダでデータ収集してくれる。トヨタは走り回る人たちの側がお金を払ってクルマを買ってくれた上に、グーグルよりローコストでデータ収集できる可能性が高い。しかも念入りなことに、従来のコンフォート系、つまりセダン型のタクシーは2018年1月で生産中止である。トヨタはタクシーのシェアの約8割を持っているので、やがては東京都を走る3万台のタクシーのうち2万4000台はJPN TAXIに置き換わる。
タクシーの話をすれば避けて通れないのが、目下タクシー業界の宿敵であるUberだ。Uberのメリットはオンデマンドの配車サービスである。いわゆるシェアリングエコノミーとしてスマホから送られてくる「タクシーを利用したい顧客」の元に、近くで手が空いているクルマとドライバーが急行する。今まで待ち時間に不満を持っていた客がこれに飛びついたわけだ。
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