トヨタが介護ロボット進出で描く未来:池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/3 ページ)
トヨタがリハビリ支援ロボット「ウェルウォークWW-1000」を発表、今秋からサービスインする。同社はこうした一連の介助ロボットを「パートナーロボット」と名付け、「いいクルマづくり」と併せて力を注いでいくという。
トヨタは脳卒中などによる下肢麻痺のリハビリテーション支援を目的とした介護ロボット「ウェルウォークWW-1000」を4月12日に発表した。
対象となるのは病院や介護施設などで、既に全国23施設で、臨床的に研究導入されている。正式なサービスインは今秋からで、営業などは医療領域に強い営業・サービス会社に委託する。初期導入費用100万円のほか、月額レンタル費が35万円(メーカー希望)で、ともに税抜きとなっている。
トヨタの説明によれば、少子高齢化に向かう現在、何らかの障害を持って暮らす人々は増加しており、それを介護する側もまた高齢化が進む。現役世代人口は減少しており、介護側の負担がさらに増えていくことが確実だ。こうした状況をロボットの導入によって改善し、未来に向けて自助生活や移動の自由を広げることが目的だという。
具体的に数字を挙げれば、2000年には高齢者1.5人を6人の現役世代が支えていたが、これが2050年には高齢者3人を現役世代4人で支えるという非常に厳しい見通しがあり、この負担を是正するロボットの導入が喫緊の課題であることは間違いない。
トヨタのパートナーロボット
従来主流となってきた補助器具が単純に膝関節などの拘束を行うだけだったのに対し、ウェルウォークWW-1000は、コンピュータ制御のモーターによって、上部ワイヤーで体重を適正に支える補助を行う。また、大腿部と膝関節の前後動をワイヤーで補助するとともに、膝に装着したモーターによって足の振り出しを促す仕組みになっている。
これら全ての補助力は可変になっており、治験データに基づいて必要量のみの補助を行うことで、転倒のリスクを抑えながら最適な負荷をかけて効率良いリハビリを可能にした。その結果、リハビリによる身体の負担を減らすことで、より長時間のリハビリを実現し、ひいては回復期間の短縮効果が見込める。それは自助生活の可能性を引き上げて介護負担を減らすことに直結する。
ウェルウォークWW-1000は正面に設置された大型モニターによって、患者自身が正面から、または側方からの歩行状態を目視確認して自律的に修正でき、より正しい姿勢が維持できる。加えて、障害箇所をかばって他の部分に負担がかかることも防ぎやすい。機能に比べて装着が簡易であることもトヨタはメリットとして挙げている。ウェルウォークというペットネームから想像できるように、トヨタの介護車両シリーズ「ウェルキャブ」とは同軸上の企画だ。
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