トヨタが販売車種を半数に絞る理由:“いま”が分かるビジネス塾(2/3 ページ)
トヨタ自動車が、国内で販売する車種を半分に削減する方針を固めた。同時に地域別の販売戦略を担当する新しい部署も立ち上げる。トップメーカーであるトヨタは戦後、一貫してフルラインアップの製品戦略を進めてきたが、今回の改革は、同社にとって極めて大きな転換点となる。
価値観の多様化
ところが近年、完璧だったこのマーケティング戦略が徐々に機能しなくなってきた。最大の理由は、国内自動車市場の縮小である。
2016年における日本の総自動車販売台数は約497万台だったが、市場はかなりのハイペースで縮小が続いており、わずか2年前との比較でも10%の落ち込みとなっている。
自動車は典型的なグローバル商品であり、国内経済の動向とは無関係に価格が決まる。日本は過去20年間、ほとんど経済が成長しなかったが、諸外国は同じ期間で1.5倍から2倍にGDP(国内総生産)を拡大させてきた。当然、物価水準も上昇することになるのでクルマの価格もそれに応じて上がっていく。
クルマは数年おきに必ずモデルチェンジが行われ、オプションでさまざまな装備を加えて販売されるので、同一車種、同一装備のクルマの値段がどう推移したのか追跡することはほぼ不可能である。だがメーカーの決算を見れば、クルマ1台をいくらで売っているのか、おおよその値段は推定することができる。
例えばトヨタ自動車における昨年の平均販売価格(売上高を販売台数で割った単純平均)は310万円だったが、20年前はわずか180万円だった。クルマの価格は20年間で1.7倍に値上がりしているわけだが、この間、日本人の給料はほとんど上昇していない。
現在の日本人の購買力では、クルマという商品はかなりの高級品となっており、会社での出世に合わせて、次々に買い替える商品ではなくなっている。消費者の価値観が多様化し、クルマに求めるものが人によって変わってきたことも大きく影響しているだろう。
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