就活生を悩ませる、おじさんたちの「個性」「人間力」という言葉:常見陽平のサラリーマン研究所(2/3 ページ)
就活の時期になると必ず現れるのが、意識高く就活生にエールを送る「若者応援おじさん」や、就活や新卒一括採用を批判する「若者の味方おじさん」だ。前者はまだかわいらしい。ただ、後者は罪である。若者を何も救わないからだ。
おじさんたちの的外れな批判に惑わされるな
本題に入ろう。今年も就活生からこんな質問をいただいた。
「画一的なリクルートスーツで、個性を表現することができるのでしょうか?」
学生に限らず、日本の就活、新卒一括採用に疑問を抱いている者が必ずと言っていいほど批判するのが、リクルートスーツだ。ある時期に一斉に同じような格好で就活を始める日本の光景は異常だと言われる。
しかし、だ。こういう批判論者は、リクルートスーツや就活、新卒一括採用といった「仮想敵」を設定することによって、ストレスを発散しているのではないかと思ってしまう。このような学生に、こう質問したら、固まってしまうのではないだろうか。
「リクルートスーツがなくなった瞬間に見える、あなたの個性とは何ですか?」
批判論者は、自分は素晴らしい個性の持ち主だと信じているのに違いない。しかし、逆にリクルートスーツがなくなった時に発揮される個性とは何なのだろうか。私服選考で落ちた時にはどうするのか。かえって自分を責めることになってしまう。
このリクルートスーツ批判同様、的外れだと感じるのが「人間力」の礼賛だ。「私は人間力で勝負する」「人間力を重視した採用を行っております」「ウチの大学では、学生の人間力を重視しています」など、学生側も企業側も、さらには大学も「人間力」なるものを連呼する者が散見される。
なんて牧歌的なんだろう。人間力とは何か。定義が曖昧だ。ここでは、この人間力なるものが誰も救わない言葉であることに注目したい。仮にその人間力なるものが、生まれ育った環境などによって育まれるとするならば、格差そのものになってしまう。「人間力で勝負だ」と言ったところで、人間力対決で負けてしまっては意味がない。
この「個性」や「人間力」の礼賛なるものは、重大な勘違いだ。別に採用活動はこれらだけを評価する場ではない。採用するべき人材かどうかを見極める場だ。それが決め手になるわけではない。
関連記事
- いま“逆求人型”の就活が必要とされるワケ
いま“逆求人型”の就活が盛り上がりを見せている――。就活定番のイベントといえば合同企業説明会、いわゆるゴウセツ。しかしいま、こうした従来の就活スタイルを変える新しい風も吹き始めているという……。 - 「世の中全て分かっている系」が厄介な理由
「意識高い系」より面倒くさいのが「世の中全て分かっている系」の人である。自分の得意分野と、生きてきた時代を基準に全てを語ろうとするので非常に厄介なのだ。 - あなたの会社は若者から魅力的に見えていますか?
2018年度の新卒採用が既に盛り上がりを見せている。「新卒の採用なんて関係ねえよ」というサラリーマン諸君も多いことだろう。しかし、サラリーマンとしての保身のためにも、少なくとも自社の採用については関心を持つべきだ。 - ビジネス界は「あれはオレがやりました」で溢れている
雑誌のインタビューに出てくる「俺がやりました」的な奴は、疑ってかかったほうが良い。期待するほどそいつは仕事していない。実際は、みんながそれなりに仕事をしているのだ。 - BOOWY好きの上司と飲むときに気を付けたいこと
群馬県高崎駅に伝説のロックバンド「BOOWY」と書かれたポスターが現れ、盛り上がっている。サラリーマン的に問題なのは、今月の会社の飲みの席で、男性上司から高い可能性でこの話題が出ること、それにどう対応するかということではないだろうか。 - 「残業(長時間労働)は仕方ない」はもうやめよう
電通の新入社員が過労自殺するという事件が起こり、話題になっている。政府はいま「働き方改革」を進めて長時間労働の是正に取り組んでいるが、繰り返されてきたこの問題を本当に解決できるのだろうか。労働問題の専門家、常見陽平氏に話を聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.