大学就職ランキングは「ナゾ」すぎる:関係者は注目しているが(2/3 ページ)
空前の売り手市場で学生優位な環境が続いている。大学関係者は「就職ランキング」にかなり注文しているが、そもそもこの種のランキングって意味があるのだろうか。
(2)超売り手市場なのにハッピーじゃない?
文部科学省が公表した、2017年卒の就職内定率は、前年度同時期を上回る85%で、過去最高数値とか。実際に学生への就職指導をしていても、こうした好環境は実感できます。少なくとも新卒採用は過去10年でも最も好調といえるでしょう。
ただ教育現場では困ったことも起きています。こうした好環境を先輩から聞いたのか、学生が大学主催就職セミナーや講座に来ないのです。大学関係者によれば、2割減どころか半減から3分の1になる講座も珍しくないとのことです。この傾向は上位校から中堅まで、全国で起きていると感じます。
就職講座が学生の本分ではないので、その代りに普段の勉強に注力してくれているなら大変喜ばしいことです。しかし現実には特段通常授業の出席率が上がるわけでもなく、単に就職関連行事への参加動員が落ちているだけということがほとんどのようです。
就活講座への参加が減ること自体、たいした問題ではありませんが、一方でこうした好環境下でも就職が順調ではない学生もいる現実があります。中堅校どころか、トップ校といわれる大学の学生で、今12月時点で無内定学生もいますし、せっかくの内定先を今から辞退しようという学生もいます。
就職環境が好転=誰もがハッピーな環境というわけではない現実があります。
(3)その数字は大丈夫?
ランキングするには評価が必要なわけですが、実際にどのようなレーティングをするのでしょう。一番分かりやすいのは「就職率」です。「就職率100%!」とうたえば受験生にもインパクトあるでしょう。でもちょっと待って。就職率って意味あるんでしょうか?
就職率そのものに統計的以外の意味があるかどうかは、その数値の対象にあります。予備校の合格率と似ていますが、Fラン含むどんな大学もひっくるめての合格率では意味がありません。東大とか早慶とかMARCHとか旧帝とか、対象を難関大に絞っての合格率ならずいぶん価値は上がります。
さらに統計では母数の取り方も重要です。元々優秀な東大特進クラスだけを母数にするのと、明らかにだめな学生を全部含めた母数では、その意味は全く別だからです。予備校関係はこうした率の水増し(逆に母数を絞ってパーセンテージを上げる)にはずいぶん厳しくしているようなので、昔と違って今どきの合格率はそれなりに正確なのかもしれません。
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