11年ぶり過去最高 キリン「氷結」が超えた壁:「旅する氷結」もヒット(1/2 ページ)
缶酎ハイのロングセラーブランド、キリン「氷結」。2017年の販売数量は11年ぶりに過去最高を更新。新商品「旅する氷結」も好調だ。強さの理由を聞いた。
キリンビールの「氷結」といえば、缶酎ハイのロングセラーブランドだ。2001年の発売以降、トップレベルの販売を続けてきた。
その氷結がいま、再び成長している。17年の販売数量は過去最高だった06年をついに超えた。前年を11%も上回る3900万ケース(1ケースは250ミリリットル×24本換算)を販売し、7年連続の増加となった。新商品の「旅する氷結」が目標を大きく上回ったことに加え、スタンダード商品や高アルコール度数の「ストロング」シリーズも好調だった。
氷結の強さの裏には何があるのか。キリンビールマーケティング部の井本亜香氏に聞いた。
ブランド定着、高アルコール商品で販売を伸ばす
氷結は01年の発売後、主に20代の若者に支持され、右肩上がりに販売を伸ばした。収穫した果実から搾った果汁を、加熱せずにそのまま凍結して使用していることが特徴。若々しさを前面に出し、缶酎ハイのイメージを変えた。06年には販売数量3680万ケースに達する。しかし、07年は3000万ケースを割り込み、その後も低迷。競合商品が増えたことに加え、酒類の価格適正化で店頭価格が上がったことが響いた。
その後、缶酎ハイや缶ハイボールなど、割らずにそのまま飲めるRTD(Ready to Drink)の市場が拡大。その流れに乗って、11年からは再び増加に転じた。競合商品もさらに増え、競争は激化したものの、それまでに築いたブランド力が強みになった。井本氏は「RTD市場では、上位5ブランドでシェア6割以上になるといわれています。参入しやすく、たくさんの新商品が出る分野ですが、消費者はよく知っている商品に手が伸びる傾向があるようです」と説明する。
また、派生商品のヒットにも助けられた。14年ごろ、スタンダード商品が伸び悩んでいた時期に、高アルコールのストロングシリーズがヒット。缶酎ハイとして初めてアルコール度数を9%まで引き上げ、新たな需要を取り込んだ。
16年には伸び悩んでいたスタンダード商品をリニューアル。アルコール度数を6%から5%に下げた。「6%が標準だと思っていたのですが、他の商品と飲み比べるとアルコールが強かった。酎ハイの種類が増えて、味覚も変わってきたことにやっと気付きました」と井本氏は振り返る。伸び悩みの原因は、いつの間にか若々しいイメージが消え、若者からは「親世代の酎ハイ」と認識されていたこと。若返りを狙い、フレーバーの拡充や商品名の文字フォントの変更なども実施。伸び悩みから脱却することができた。
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