京王電鉄「京王ライナー」増発に“ちょっと心配”:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/4 ページ)
京王電鉄が2月22日にダイヤ改正を実施する。注目は同社初の座席指定列車「京王ライナー」の誕生だ。平日、土休日ともに夜間時間帯を中心に運行する。京王電鉄沿線の価値向上に貢献するけれども、ダイヤを見て少し心配になった。どうか杞憂であってほしい。
いよいよ京王電鉄初の座席指定列車「京王ライナー」が2月22日に走り始める。新宿発の京王八王子行き、または橋本行きが5本ずつ。平日は帰宅ラッシュのピークをやや過ぎた午後8時から午前0時20分まで。土曜休日は少し早く、午後5時から午後9時20分まで。座席指定料金は400円で、京王八王子行きは府中まで、橋本行きは京王永山まで座席指定券が必要。その先の駅からは座席指定券なしで乗車できる。つまり「新宿駅発車時点の座席を保証しますよ」となっている。
京王ライナーは有料座席指定列車だけど、観光向けではない。主に通勤者向けに着席を保証する列車として設定されている。このような列車を「通勤ライナー」と総称する。通勤ライナーの運行は利点も欠点もある。しかし、今のところ利点の方が大きい。乗客は着席できて快適に移動できる。鉄道会社としては、営業面でサービスメニューを増やせるし、客単価を上げられる。
乗客は快適、沿線価値向上で京王電鉄もメリット大
乗客の誰もが、必要なときに「通勤ライナー」を利用できるという状況は、路線と沿線の価値を高める。東京都心から放射状に展開する大手私鉄各社は、沿線価値の競争状態にある。少子高齢化とはいえ、沿線の価値を高めれば、他社の沿線から移住する人もいる。上京した人の住まいとして選んでもらえる。沿線価値の向上は、少子化の対抗策でもある。
京王ライナーは関東大手私鉄の通勤ライナーとしては最後発だ、それだけに、通勤ライナーの利点も欠点も吟味されているようだ。停車駅もかなり大胆に設定された。京王八王子行きも、橋本行きも、主要駅の明大前駅、調布駅には停まらない。明大前駅通過は共同通信が関係者談話としてスクープしたけれども、調布駅通過までは見抜けなかった。かなり大胆な設定といえるけれど「長距離通勤者向け」「方面別に特化させた」という意味でスジが通っている。先輩格の京急電鉄の通勤ライナー「京急ウイング号」も川崎と横浜を通過する豪快な設定だ。
京王電鉄は有料座席指定列車の経験がなく、販売システムを一から構築する必要がある。旅客案内も運用もいままでとは違う。何といっても、京王ライナーのために新型車両5000系を投入した。京王電鉄の歴史上、革命的な案件だ。都営地下鉄新宿線との相互直通運転以来の大事件である。
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