日大アメフトの悪質タックル問題 経営者はこれを冷静に見ていられるのか:他山の石に(2/2 ページ)
日大アメフト選手の悪質なタックルが監督からの指示だったとして、大きな問題となっている。こうしたパワハラ行為は、企業においても決して軽視できない。経営トップから不正を強要される社員が相次いでいるからだ。
『不正に走る普通の人たち』(日本経済新聞出版社)などの著者で、会社組織の内部事情に精通する前田康二郎氏も、これまでに経営トップや組織のリーダーが介入するさまざまな不祥事を見聞きしてきた。
例えば、以下のようなケースがあったという。
(1)「赤字回避のために経費節減を徹底しろ」という経営者からの圧力で、深夜帰宅のタクシー代など、経費の“自腹精算”が常態化していた。後から経営者に抗議をしても、「社員が勝手にしていたことで具体的な指示を出したことはない」と突っぱねられた。
(2)社内の派閥争いで「あいつをつぶしたら君を出世させてあげる」と上司が部下に約束し、実際にその通りにしたら「用済み」としてその部下の首を切った。後にその元社員が「黒幕はあいつです」と上層部に抗議しても、「上司は具体的な指示をした覚えはないと言っている」として受け入れられなかった。
(3)社内で「1人だけ予算を達成していない」と会議でプレッシャーをかけられ、架空売り上げを計上してしまった。
前田氏は企業でこうした不正が起きるのは、組織や人の「実力」に関係しているという。
「人や組織に実力があるうちは周囲の人が勝手に集まってくるので、意図しなくても権力が集中して自分(たち)の思う通りに物事が進められる。しかし、自発的に『全て自分に権力を集中させ、思い通りにしたい』と思い始めたら、それは自身の実力不足や衰えのきざしで、無意識に不正行為、圧力、ハラスメントといった手段で現状を何とか維持しようとする誘惑に駆られる可能性が高い」(前田氏)
ここで挙げたのは氷山の一角にすぎない。経営トップのパワハラが明るみに出ずに、今なお苦しんでいる社員はいるのだ。今回の日大アメフト部を取り巻く一連の問題からビジネスパーソンが学ぶことは多い。これを他山の石とし、自社のコンプライアンスを改めてしっかり見直すべきだということを、ことさら経営トップには強く訴えたい。
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