「超就職氷河期世代」よりも老後が心配な世代は?:備えあれば憂いなし(1/2 ページ)
他の世代に比べて老後の備えが出遅れている世代とは? 年代別可処分所得の変化を分析することで、それを導き出してみたいと思う。
家計調査によると、勤労者世帯における年代別黒字率が最も高いのは29歳以下である。2002年は30歳代の黒字率が最も高かったのだが、ここ15年で逆転したらしい(図表1)。
しかし、この結果だけを見て、「最近の若者は倹約志向だ」とか「最近の若者の老後は安泰だ」と結論付けるべきではない。
黒字率は、可処分所得に占める黒字の割合で、黒字は可処分所得と消費支出との差である。つまり、消費支出が変化しなくとも、可処分所得が変化すれば、黒字率は変化する。02年から17年における年代別黒字増加額を見ると、29歳以下の黒字率が大きく増加している理由が分かる(図表2)。
29歳以下の黒字率が大きく増加している理由は、その年代のみ可処分所得が増加しているからだ。消費支出に限れば、全年代ともに減少しており、29歳以下の3.0万円の減少は、70歳以上の3.7万円や40歳台の3.5万円の減少と比べると小さい。倹約志向なのは、若年層に限った話ではなさそうだ。なお、全年代消費支出が減少しているのは、倹約志向なのではなくデフレが原因と思うかもしれない。しかし、02年より17年の方が、消費者物価指数は高い。
29歳以下の可処分所得が増加する一方、30歳台以上の可処分所得が低下している結果を見て、若者が優遇されていると判断するのも早計だ。02年当時、若年層の所得が過度に低く抑えられていただけかもしれない。ただ、世代により、この15年間の年代別可処分所得の変化の影響の受け方に差があることは間違いない。というのも、年代によって、可処分所得が低下したタイミングが異なるからだ。
図表3は、30歳台と40歳台の黒字増減額の年別推移である。全世代の可処分所得が大きく下落した09年を境に、30歳台と40歳台では相反する傾向が見える。30歳台は、可処分所得が08年以前は減少傾向にある一方、10年以降は上昇幅が大きい年が多い。対して40歳台は、08年以前は増加傾向にある一方、それ以降は減少幅が大きい年が多い。
そこで、02年から17年の家計調査を用いて、生年別に15年間の年代別可処分所得の変化の影響を確認する。ただ、目的は世代別の有利不利を判断することではなく、ましてや、世代間の不毛な争いを招くことでもない。年代別可処分所得の変化の結果、他の世代に比べて老後の備えが出遅れている世代があるのではないか、一方で、不遇な世代ほど、地味で慎ましい生活をし、消費支出を調整しているので、老後の備えに対する充足度は、世代とは無関係ということも考えられる。この点を確認したい。幸か不幸かは別として、ぜい沢を覚えた世代より、不遇な世代の老後の方がまだ良いのではないか、という就職氷河期世代の筆者が長年抱いてきた期待もある。
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