「超就職氷河期世代」よりも老後が心配な世代は?:備えあれば憂いなし(2/2 ページ)
他の世代に比べて老後の備えが出遅れている世代とは? 年代別可処分所得の変化を分析することで、それを導き出してみたいと思う。
調査方法は至ってシンプルである。まず、年代別に、黒字、消費支出、可処分所得の対前年増減額(図表3の各系列に相当)を算出する。次に、生年別に15年間の増減額の総和をそれぞれ求める。
その際、対応する年代の値を選択し合算する。図表4は、生年別対前年増加額の総和を平滑化したものである。まず、可処分所得に着目する。一見すると、1960年代末期に生まれた人が最もマイナスの影響を受けているように見えるが、正しくは70年代中盤に生まれた人だ。というのも、対前年増減額の総和なので、少し先に生まれた人との比較でしかない。つまり少し先に生まれた人との差が最も大きいのが、60年代末期に生まれた人であって、最もマイナスの影響を受けているのは、マイナス幅が累積している70年代中盤以降に生まれた人である。
いわゆる就職氷河期、中でも大学等卒業予定者の就職内定率(4月1日時点)が最も低くかつ、99年12月の改正派遣法施行後の2000年入社の70年代末期に生まれた人(超就職氷河期世代)が最もマイナスの影響を受けていると予想したが、実際は超就職氷河期世代よりやや上の世代であったことに驚いている。
もちろん、70年代末期生まれの人以降、可処分所得の増加がプラスに転じているとはいえ、上昇幅は軽微であることから、超就職氷河期世代のマイナスの影響も十分大きい。
可処分所得と消費支出の関係を見ると、少し安心する。少し先に生まれた人との比較で可処分所得が減少した世代ほど、少し先に生まれた人との比較で消費支出を減少させる傾向が確認できる。しかし、可処分所得の増減ほど、消費支出は増減していない。その結果、黒字は世代によって異なる。つまり、老後の備えに対する充足度は、年代によって異なっている。
この15年間だけを見る限り、黒字のマイナス幅が累積している70年代初期に生まれた人の充足度が最も低そうだ。バブルの余韻を経験した世代より、黒字幅を拡大させつつある不遇な超就職氷河期世代の方が、老後の備えという面でまだ良さそうだ。老後の備えに対する充足度について、ダーウィンの言葉に擬えて解釈すると、最も可処分所得が高い人ほど高いのではなく、可処分所得の変化に対応できる人ほど高いということだ。
ただ、可処分所得の増減に合わせて消費支出を増減させることは困難なのだから、将来の所得減少リスクも考慮し、時々で適正な消費支出を判断できる人の方が、より老後の備えに対する充足度が高いに違いない。
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