国家公務員で「月100時間超」の残業が常態化、メンタル不調が多発か 慶大調査:霞が関に「デジタル変革」を(2/2 ページ)
国家公務員は、月平均100時間以上の残業をしている可能性があるという。慶應義塾大学大学院の岩本隆特任教授の聞き取り調査で判明した。「待ち時間」の発生を前提とした業務が残業を生んでいるという。
「待ち時間」前提の業務が残業を生む
一連のインタビューや国家公務員の業務プロセスを分析した結果、岩本氏は残業を生む要因は「『待ち時間』を前提とした業務フロー」などにあると突き止めた。
国家公務員の業務フローでは、国会の答弁を作成した際などに、幹部、他部局、他省庁の確認作業の結果を待つ「待ち時間」が相当数発生するという。待機中は他の作業を行わないため、業務の効率性が低下するとしている。
答弁資料はハードコピーで提出する必要があり、電子ファイルでの送付は禁じられていることも、テレワークなどの柔軟な働き方を妨げるとみている。
「紙偏重」「会話重視」の文化も残業の要因
岩本氏はこのほか、(1)紙資料の偏重、(2)メールよりも電話を重視した連絡体制、(3)対面での説明・相談を重視する文化――なども長時間労働を助長すると指摘している。
こうした課題の解決策としては、(1)国家公務員が私物のモバイル端末などを業務利用する「BYOD」(Bring Your Own Devices)、(2)人工知能(AI)やRPA(ロボットによる業務自動化)、(3)Web電話帳――などの導入を挙げた。
同氏はまた、各省庁のデータベースをクラウド化し、管理・運用のコスト削減と利用効率の向上を図ることも提言。「霞が関の業務実態に合わせた適切なICT環境を横断的に整備するとともに、テレワークを前提とした業務フローや人事・予算制度の見直しを行うことが必要だ」としている。
岩本氏は「国家公務員が『働き方改革』の重要性を自ら実感しなければ、一般企業に対して真に実効性のある施策は期待できない」と結論付けている。
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