厚労省の「ブラック企業」指導で支払われた未払い賃金、446億円:1870社を実態調査
厚生労働省が、残業代を支払っていなかった企業に対し、2017年度に行った指導の結果を発表した。1870社の実態を調査し、446億4195万円の未払い残業代を支払わせたという。どんな指導を行ったのか。
厚生労働省は8月10日、2017年度(17年4月〜18年3月)に時間外労働に対する割増賃金を100万円以上支払っていなかった企業に対し、全国の労働基準監督署が監督指導を行った結果を発表した。1870社を調査し、対応策を立案・実施した結果、20万5235人分に相当する446億4195万円の未払い残業代が支払われたという。
「残業代未払いの撲滅」をうたったポスターを貼らせる
厚労省が公表した具体例によると、上層部がタイムカードを打刻した後に残業を行うよう現場側に指示しており、残業代を支払っていなかった小売業者に対し、労基署はメールの送信記録などを調査。労働時間の実態を調べた上で、未払いだった残業代を払うよう指導した。
さらに、労働環境の改善を代表者に宣言させたほか、「残業代未払いの撲滅」をうたったポスターを作成させ、社内に掲示させた。タイムカードの適正打刻を促進する研修用DVDなども作成し、店長を通じて労働者への研修を行わせた。
社長に朝礼で宣言させる
部下が残業する際、上司に「残業申請書」の提出を義務付けていたはずの建設業者では、同申請書を提出していない社員に残業させるケースが横行していた。
これを突き止めた労基署は、「賃金の不払いを解消するため、働き方改革を行う」との決意表明を朝礼で社長に行わせた。また、総務部の担当者に定期的に巡回させ、帰宅していない社員がいた場合は申請書の提出状況を確認する体制も取り入れた。
ネット上の書き込みもチェック
労基署はWeb上の情報チェックも強化しており、「残業代が支払われていない」などと書き込まれていた企業に対しても立ち入り調査を行った。
その結果、労働者が始業・終業時刻をPCに入力する仕組みを設けていた企業で、オフィスへの入退室記録と一致していないことが判明した。実態をさらに調べると、月末になると、社員が残業を申告しない風潮があったことを把握。改善するよう指導した。
また、自己申告と入退室記録の乖離(かいり)を自動的に検知できる勤怠管理システムを新たに導入し、月に2回の補正を行う体制を設けた。会社幹部が集う会議に労基署の担当者が出席し、自己申告制の適正な運用について説明する場も設けた。
こうした取り組みにより、17年度に支払わせた未払い残業代は前年度から3.5倍、支払いに応じた企業は1.4倍に増えていた。厚労省は「賃金不払い残業の解消に向け、引き続き監督指導を徹底していきます」としている。
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