ゴーン事件を「西川の乱」だと感じてしまう、これだけの理由:スピン経済の歩き方(4/7 ページ)
カルロス・ゴーン前会長の逮捕で、日本中に衝撃が走った。有価証券報告書で役員報酬の一部を少なく記載した容疑で逮捕されたわけだが、この事件について、筆者の窪田氏は「西川の乱」ではないかと見ている。その理由は……。
危機管理としては「異常」
自動車業界で綿密な取材をするジャーナリストや専門家が多く指摘しているが、実は昨年の検査不正問題というのは、ゴーン時代に、リストラされた品質部門がその流れを踏襲する西川社長に仕掛けた「西川おろし」だったという話があるのだ。
ここまで言えば企業広報の経験者などはピンとくるだろう。
世界中に従業員がいるような巨大グループでは、社長会見を世間への情報発信だけではなく、インナーコミュニケーションやガバナンスに利用することが多い。つまり、西川社長の「ひとり会見」は、内部の不満分子に対して毅然とした態度でのぞみ、「私は決してクーデターには屈しないぞ」という強い決意を見せつける目的だった可能性があるのだ。
そんなバカなと思うかもしれないが、西川社長が表舞台に出る時にかなり「組織内」を強く意識しているのは、(2)の『ゴーン逮捕後に「首謀者」と断定』からもうかがえる。まだ記憶に新しいだろうが、「ゴーン逮捕」という衝撃的なニュースが世界中にかけ巡った直後、西川社長は上場企業の経営者としてありえないようなダイナミックな発言をしている。
「2人が首謀者であることは間違いない」
「ゴーン氏一人に権限が集中したことが一つの誘因だろう」
ちまたに溢れる「ゴーン悪人説」からも分かるように、世間の多くの人は「逮捕=有罪」と誤解しているが、そういう考えは企業の危機管理的にご法度である。犯人は他にもいるかもしれないし、冤罪(えんざい)の可能性もあるからだ。そのため、企業の社員や経営者が逮捕された場合は、「捜査に協力をする」「司法の委ねる」「捜査の影響を及ぼす可能性があるので、弊社としては何も言えない」などノーコメントを貫くのが普通なのだ。
日産が社内調査をして、取締役会にかけて追放をしたのなら、先ほどのようにゴーン氏を好きなだけディスればいいが、ゴーン氏を逮捕したのは東京地検特捜部で、しかも司法の判断はこれからである。
「共犯者」の疑いをかけらてもおかしくない元側近が、刑事事件の容疑者を「クロ」と断定して、なおかつ動機までにおわせる。
企業トップの振る舞いとしては、「異常」としか言いようがない。ゴーン氏をののしればののしるほど、それをのさばらせた組織や、長く使えた側近にも責任があるじゃんか、という「巨大ブーメラン」が発生するからだ。
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