僕の足を引っ張らない社会を作る――ホリエモンが演劇をアップデートする理由:『クリスマスキャロル』再演の真意(2/2 ページ)
ホリエモンこと堀江貴文氏が主演を務め、現在公演中のミュージカル『クリスマスキャロル』。そもそもなぜホリエモンは芝居をやっているのだろうか? その真意を探った。
演劇は年を取ってもできる
演劇は年を取ってもできます。デジタルカンペシステムや、昔の演劇を再演するための著作者印税システムをネットで共有することができれば、演劇を取り巻く環境はよくなると思います。ほとんどの役者さんは食べていけていません。でも彼らはきついチケットノルマを課せられたとしても、千秋楽を迎えたときの高揚感や一体感が忘れられなくて続けているのです。だから食べていけないようなプロの役者さんが、素人の役者さんに指導する派遣システムを作るなどすれば、演劇のエコシステムはうまく回るのではないかと思っています。
演劇には中毒性があります。だから定年後のサラリーマンの人生を豊かにする装置としては絶好だと思います。スポーツも同じですね。僕がJリーグやBリーグのアドバイザーをやっている理由もここにあります。サッカーやバスケットボールのサポーターには、「愛好者じゃないとサポーターになってはダメ」という雰囲気はありませんか? 「初心者は来るな」みたいな。でも僕は、それは間違いだと思っています。
JリーグやBリーグの経営で一番大切なのは、「年に1〜2回しか見に来ない人を、いかにまた来させるか」なのです。その層の人たちが来なければ、経営は成り立たないからです。僕はスタジアムを「結界」と呼んでいますが、普段足を運ばない人にとっては、スタジアムには「見えない壁」があるのです。この「結界」を越えさせるために、Jリーグの鹿島アントラーズは、スタジアム内にクリニックやスポーツジム、マッサージサロンを作りました。地域住民が普段から足を運ぶ習慣を作ろうとしているのです。このようにスポーツも、定年後のサラリーマンにとっての生きがいになると思っています。
僕の活動は単なる「遊び」だと思われるかもしれません。でも150年前の日本人が、今の僕たちの暮らしを見たら、「何でこいつら遊んでばかりいて田んぼ耕さないんだよ」と思うのではないでしょうか。もう僕たちは、生活するために働く時代を超越したともいえるのです。まさにテクノロジーの勝利です。AIの進化によって、僕たちは労働から解放されつつあるのです。
遊びを全力でやること
「人生は壮大な暇つぶし」という格言がありますが、あと何年かでまさにそういう時代に突入します。だから今まで以上に豊かな人生を歩むことが大事になりますね。豊かな人生を歩むためには、「遊びを全力でやる」ことが必要だと思っています。そして同世代の人たちとつるむという習慣を変え、年齢の壁を越えることが大切です。これは義務教育の弊害なのです。小学校と中学校合わせて9年間、同じ地域の同じ年に生まれた人とつるむ。学校という世界しか知らない教師をあがめながら過ごす。これはよく考えたら異常なことではないでしょうか。異常な行動を9年間もさせられることによって、これが当たり前なのだと植え付けられているのです。
会社では当たり前のように「同期が……」という話をします。でも、これこそ多様性がゼロの世界なのです。だから社会に出ても同じくらいの年齢の人としか話が合わないという人生を歩んでしまう。これは大問題です。それこそ年を取ったら、歯が抜けるように同期は消えていきます。文字通り「死を迎える」わけです。だから僕たちは近未来を念頭に準備をしなければならない。カラオケや演劇という例を出しましたが、それ以外にも皆さんができる活動はあると思います。頑張ってください。ありがとうございました。
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