地方の有力スーパーが手を組んだ“1兆円同盟”誕生、イオンとどう戦う?:小売・流通アナリストの視点(1/5 ページ)
2018年末、食品スーパー業界では久々の大型再編となる「新日本スーパーマーケット同盟」の結成が発表された。地方の有力スーパーが手を結び、売り上げの単純合計で1兆円を超えたのだ。
2018年12月、食品スーパー業界では久々の大型再編となる「新日本スーパーマーケット同盟」の結成が発表され、12月28日の日経MJは1面をこのニュースで埋めた。
これは上場食品スーパー業界3位(以下、順位はダイヤモンド・チェーンストア2018年9月15日号より)のアークス(北海道、北東北 売上高5139億円)、8位のバロー(中部、近畿東部 売上高5440億円。うち食品スーパーは2900億円)、14位のリテールパートナーズ(山口、九州北部 売上高2289億円)という業界の有力企業が資本業務提携に踏み込んだというもの。経営統合ではないが、売り上げの単純合計では業界1位に相当する1兆円超となる巨大な食品スーパーのグループが形成されたことになる。
ただ、このニュースを見ても、日本に住む人の半分以上はここに登場した企業名にピンとこなかったことだろう。それは、この巨大なグループの店舗は、首都圏や京阪神にはほとんど存在しないため、その店舗を見たこともないからである。
食品スーパーというのは、いわゆるスーパーマーケットのうち、売り上げに占める割合が7割以上のものとされている。イオン、イトーヨーカ堂、ユニーなどの複層階の大型総合スーパーとは違い、おおむね食品と生活に密着した家庭雑貨を売っている1階建てのスーパーをイメージしてもらえればいい。
意外と知られていないが、食品スーパーの業界には、長らく全国展開しているトップ企業が存在していなかった。地域ごとにそれぞれ有力企業が存在して、地域内での競争を繰り広げているという時代が長く続き、少し前までは複数の県でトップシェアを持っている企業さえほとんどいなかった。そんな事情もあって、こうしたニュースに登場する上位企業も、ところ変われば全くなじみがないのである。
こうした状況は、上位企業による寡占化が進んでいる欧米にはない、日本市場独特の事情であるらしい。一般的にチェーンストアは規模の利益が働くため、上位企業の競争力が下位を圧倒し、急速に寡占化が進む。日本でもコンビニエンスストア業界などはまさに理論通りの経緯をたどり、事実上、セブン-イレブン、ローソン、ファミリーマートの3社独占になっている。
しかし、日本の食品スーパーは、生鮮品などのインストア加工という仕組みを採用して独自のタイプに進化したため、規模の利益が効きにくくなった。日本には欧米にない生食を含む魚食習慣があり、生鮮品への鮮度要求が極めて高い。
インストア加工とは何か。食品スーパーでは売場の裏側にバックヤードを設けて、その日に陳列する生鮮品を店内で最終加工して(魚を刺身にする、肉を切ってパック詰めするなど)並べている。このことを指す。日本の食品スーパー業界ではインストア加工という仕組みを採用した企業が、時代を経て生き残った。
このやり方は商品の鮮度は良いが、加工人員を各店舗に配置する必要があるため、チェーンといっても規模の利益による圧倒的な差がつきにくかった。こうした構造のスーパーが消費者の支持を得て広がっていったため、規模の利益による淘汰はゆっくりと進み、長い間、“地方予選”が終わらない状態が続いたのである。
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