エンタープライズ:ニュース | 2003/10/23 11:11:00 更新 |
Oracle幹部らはグリッドを支える10gの自動管理機能をアピール
グリッドを実現するのに欠かせないのが、管理機能の自動化だ。動的なITリソースの再配置は手作業では不可能だからだ。2日目を迎えたOracleWorld 2003 Parisでロズワット執行副社長らは改善された管理機能をアピールした。
10月22日、仏パリの「OracleWorld 2003 Paris」は2日目を迎え、Oracle 10g製品群の出荷に責任を持つサーバテクノロジー担当執行副社長、チャック・ロズワット氏が登場した。同氏は各製品開発担当者とともに、10g製品群の新機能を欧州ユーザーに向けて披露した。
温厚な口調が印象的なロズワット氏は先ず、Oracleのグリッドの特徴として、自動化、仮想化とプロビジョニング、プーリング、負荷分散、QoS(サービス品質保証)の5つを挙げる。そして、“10g”を冠した3製品「Oracle Application Server 10g」「Oracle Database 10g」、および「Oracle Enterprise Manager 10g」でエンタープライズグリッドを実現すると続けた。
管理機能が新しいOracle Database 10g
主力製品のOracle Database 10gにはさまざまな新機能が加わっているが、まとめると「管理作業にかかるコストと労力の削減」に集約できそうだ。同製品の開発を担当した、データベース担当上級副社長のアンドリュー・メンデルソン氏は、強化されたRAC(Real Application Clusters)機能のほか、自己管理やデータのプロビジョニングなどを紹介した。
中でも、ストレージ管理を自動化したAutomatic Storage Management(ASM)は大きな特徴といえそうだ。データベース管理者にとってストレージ周りの管理作業は煩雑なものだが、ASMでは、メモリ管理や性能管理といった作業を自動化する。これにより、これまで50〜60%の時間をストレージ管理に割いてきたデータベース管理者の労力は、飛躍的に削減できるという。メンデルソン氏はステージで、ASMを使って、4つのディスクで構成されるデータベースシステムにディスクを追加するというデモを披露した。ディスクが追加されるとASMは直ちにそれを認識し、自動的に負荷分散を行った。
そのほか、データベース全体の管理の自動化としては、「Automatic Database Diganostic Monitor」(ADDM)も紹介された。これは、システムを診断してデータベース管理者にアドバイスするという機能で、オートノミック的要素を持つ注目技術といえる。
このような管理機能は、グリッドと切り離して見ても十分に魅力となりそうだ。実際、メンデルソン氏は「グリッド構築の予定のない中堅および小規模事業者にとって、管理機能の改善は大きなメリットとなるだろう」と話している。
また、Oracle Database 10gは、その使い勝手の改善も強化ポイントの一つといえる。インストールに関しては、CD-ROMを1枚にし、インストール時間も短縮した。基調講演中、メンデルソン氏は実際にインストール作業を約10分で終え、簡便さを実証してみせた。
RAC機能と連携するApplication Server 10g
続いて登場したアプリケーションサーバ開発担当上級副社長のトーマス・クリアン氏は、Oracle Application Server 10gに関して、アプリケーションのQoS、管理コストの削減、セキュリティ管理コストの削減などを実現する機能を中心に紹介した。
最初にクリアン氏が取り上げたのは、「Workload Manager」だ。アプリケーションサーバの一般的なCPU使用率は20〜30%にとどまっており、今日のアプリケーション管理の課題となっている。Workload Managerは、企業がそのポリシーに基づき、アプリケーションごとに負荷のしきい値を設定することができる。設定しておいたしきい値まで負荷が増えると、別のアプリケーションサーバにクローニングを行い、自動的に負荷分散させることも可能だ。動的で柔軟な運用によって、CPUリソースを効率良く利用できるという。
また、エンドユーザーの視点からパフォーマンスのモニタリングを行う監視機能や、性能に応じて自動的にキャパシティを割り当てる自動プロビジョニングも紹介された。モニタリング機能は、データベースや管理ソフトウェアと統合されているため、アプリケーションの性能が劣化したときには原因を教えてくれる。このような機能により、エンドユーザーのエクスペリエンスは飛躍的に向上するという。
クリアン氏が「他社との差別化」と強調した機能は、ダウンタイム短縮を実現する「Fast Start Fault Recovery Architecture and Failure Notification」(FaN)だ。これはOracle Database 10gのRACとノード間で連携する機能で、データベースがダウンした際、関連するアプリケーションサーバが速やかに別のデータベースに切り替わるというもの。これにより、トータルのダウンタイムは5〜7秒で済むという。データベースとアプリケーションサーバの両方を持つOracleならではの強みといえそうだ。
Oracleでは現在、実際にApplication Server 10gを使って同社Webサイト「Oracle.com」を動かしているという。クリアン氏は、「8月に稼動して以来、ダウンタイムはゼロ」と高信頼性をアピールした。
クリアン氏によれば、Oracle Application Server 10gの出荷開始は「約1カ月の予定」、つまり、11月中には出荷となりそうだ。
このほか、ドラッグ&ドロップ操作でWebサービスなどのアプリケーション開発ができる、視覚的なプログラミングツール、「JDeveloper 10g」の紹介も行われた。同ツールのベータ版は、同社サイトより既にダウンロードが可能という。
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