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2004/02/19 18:24:00 更新


JTC 2004、ツール標準化を進めるNetBeans、ゴスリング氏はJPLのローバに夢中

19日、開催最終日のJTC 2004基調講演でビデオ出演をしたゴスリング氏は、Sunでデベロッパーツールの最高責任者、そしてフェロー。最新動向と共に、JPL、マーズ・ローバーへの取り組みについてが熱く語られた。

 Sun 3days最終日の19日、サン・マイクロシステムズ主催のカンファレンス「Java Technology Conference 2004」が開催された(Sun 3daysレポート)。

 基調講演の前には、サン・マイクロシステムズ常務取締役の末次朝彦氏から18日の来場者数についてが報告された。当初、3000名と予想されたが、盛況で5000名を記録したことと、「申し訳ないが、セッションによっては立ち見状態となってしまった」と喜びも見せる。そして基調講演について、18日が「ニューフロンティア」をキーワードとしたものだったが、本日(19日)は「遠い所にあるJavaテクノロジー」というキーワードの元お送りする、とゴスリング氏のビデオ基調講演へとつないだ。

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基調講演でMER(Mars Exploration Rover)への思いを熱く語ったゴスリング氏


 米Sun Microsystems、副社長兼フェローの称号を持つジェームス・ゴスリング氏は、デベロッパーツール部門の最高責任を担う人物(JavaOne関連記事)。同氏からは、ツールの最新事情、さらに18日の基調講演でも会場を沸かせた火星探査車マーズ・エクスプロレーション・ローバーへのプロジェクトが語られた。

 ゴスリング氏はまず最初に、Sunには現在3つのツールプロジェクトがあると言い、それぞれのターゲットが明確な「NetBeans」、「Java Studio Creator」、「Enterprise Studio」というプロジェクト名で示した。

 「NetBeans」は、Sunのオープンソースプロジェクトとして知られ、目的をデベロッパーツールの利便性向上としているもの。ツール間の連携を強化し、現行で欠けていると考えられる操作性にまでも標準化を取り入れていく試み。Eclipseと同種といえるIDE。

 一方、「Java Studio Creator」は、JTC 2004会場でもハンズオンセッションが組まれ、デベロッパー以外のビジネスユーザーにもアピールする敷居を下げたツール。従来からの「Project Rave」として知られ、VBやCobolユーザーをJavaへと導くことを主眼としている。丸山不二夫氏率いる稚内北星学園大学のハンズオンラボセッションは満員御礼状態であり、予想通りの立ち見状態となった。

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稚内北星学園大学によるハンズオンラボ。昼から徹底した5時間半の実践講座となった


 最後の「Enterprise Studio」は、J2EE(EJB)までをターゲットとするJava Enterprise Systemプロジェクト。分類紹介された3つは、Javaに関わるクリエイターの裾野を広げるべく進める構想だ。

マーズ・ローバーへのプロジェクト参加がJavaの奥行きを見せた

 ゴスリング氏の講演は、これまでもマーズ・ローバーへのコメントが多いことで知られている(関連記事)。今回は、JPLの偉業で着陸を果たしたせいか、さらに熱っぽいコメントとなった。「JPL/NASAにはかなり深く関わっています」とゴスリング氏。

 ローバープロジェクトへの参加は主に2つ。地球上のJPLで操作されるミッションデータを受信し、探査機へと指令を行う通称「MDS」プロジェクト。そして、宇宙船に搭載される新型の管制システム。後者はまだテイクオフされていないものの、先進のものとしてゴスリング氏が先導しているという。また、18日の基調講演でもデモされた「Maestro」にも関わっており、JPLの管制システムとほぼ同等なものを実感できるJavaコードのアプリケーションプロジェクト。Maestroは、MDSからの派生、そして96年頃から始まった初期バージョンは、5年前のJavaOneでも披露されていたという。

 なかでもゴスリング氏が感心したと語るのは、「JPLはMaestroで受信可能なデータを安全なサブセットとしてWeb上へポーティングしたことだ」という。事実、Maestroから数時間から数十時間遅れ程度で最新のローバーデータが参照可能だ。MDS(Maestro)のJavaテクノロジーには、Java APIはもちろん、Java 3D、Java Advanced Imagingなどが利用されている。

 ゴスリング氏からは、「家族を避けてローバーの着陸模様をビデオで見ていた」(「NASA TV」と思われる)という熱いコメントも寄せられた。

 JPLでの試み以外にも、Javaテクノロジーはリアルタイムの埋め込み確立、という一般への計画も進められている。「Javaは今後も各種のエッジデバイスに利用されるが、そのデバイスがよりインテリジェントで使いやすくなった際、Javaで何ができるかを研究している」とゴスリング氏。

 その一端としてWebサービスが人気な昨今、ネットワークとの関わりでスマートダストと同じく「モーツ」のキーワードで語る。「モーツという断片を散りばめれば、自動的にネットワーク接続してデータのやり取りを行う」とゴスリング氏。そして、Jini(関連記事)が同じような種であることを語り、Sunが常にイノベーションの先駆者であることを強調する。

 講演の最後には、JTC 2004の参加者に向けて歓迎の言葉とスタッフへのコンタクトを呼びかけた。

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ゴスリング氏から日本のデベロッパーへの歓迎コメント


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関連リンク
▼JPL(Jet Propulsion Laboratory)
▼Mars Exploration Rover Mission|JPL
▼Sun 3daysレポート

[木田佳克,ITmedia]

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