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» 2006年01月01日 00時00分 UPDATE

企業が知っておくべき法律知識:「将来有望なIT技術です。融資してくれませんか?」――あるIT社長の悩み

技術はあるけど金がない……。そんな悩みを持つIT企業は意外に多い。ここでは、ある将来有望な知的財産権を持つ企業が資金調達を行うための方法を考える。

[ITmedia]

Q:IT関連のベンチャー企業を経営しています。将来有望なIT関連技術を開発したため、大きく資金調達をして事業拡大したいのですが、実績も少なく、また、不動産などを保有しているわけでもありません。銀行からの融資も難しいようなのですが、どうすればよいでしょうか。


 一般的に、銀行などによる融資は、融資対象企業が保有する不動産などの有形資産を担保にしたものが中心です。しかし、多くのベンチャー企業では、有形の資産ではなく、技術やノウハウ、後述する「知的財産権」が重要な資産なのではないでしょうか。

 融資を受けられるほどの十分な有形資産は持たないが、知的財産は保有しているといったIT企業が資金を調達するための方法として、自社の技術やノウハウを引き当てとした資金調達方法などを紹介します。

方法1:知的財産権担保融資

 著作権や特許権などの知的財産を担保として評価し、融資を受けるのが「知的財産権担保融資」です。

 著作権や特許権を融資の担保とする方法には、質権の設定または譲渡担保権の設定が考えられます。ただし、著作者人格権は譲渡できませんので、担保の対象とはなりませんが、担保設定の際には著作者人格権の不行使を約束することになります。

 著作権の移転や著作権を目的とする質権の設定を第三者に対抗するには登録が必要です。通常の著作権の登録機関が文化庁ですが、プログラムの著作権は、財団法人ソフトウェア情報センター(SOFTIC)が、特許権は特許庁がそれぞれ登録機関となります。

方法2:知的財産の証券化、流動化

 企業が保有する特定の資産の価値だけを引き当てとするのが「資産の証券化、流動化」です。知的財産を流動化することで、そこから将来生み出されるであろう価値を引き当てに、現段階でまとまった資金調達を行います。

 知的財産の証券化、流動化を行うには、対象となる知的財産をSPC(Special Purpose Company)と呼ばれる特定目的会社に譲渡する必要があります。これは言い換えれば、知的財産を使いこなせる物的、人的な資産が当該企業に帰属している場合は、この方法の適用が難しいということを意味します。

 さらに、将来の価値を引き当てにしていますので、対象となる資産は厳格に選定される必要があります。特に、その価値が客観的に評価できることがポイントとなります。プログラムなどの場合、ライセンス収入などがあれば評価の確実性が高いと考えられるので証券化、流動化の対象となり得るでしょう。

 まとめると、企業から分離した場合でも第三者による利用可能性が高く、かつその価値が客観的に評価できる知的財産が、証券化、流動化に適するといえます。

知的財産に基づくファイナンスの問題点

 これまで紹介した方法はいずれも知的財産の価値に着目した資金の調達方法ですが、幾つか問題となり得る部分もあります。

 まず、知的財産の価値を客観的に評価する方法が確立されていないことでしょう。将来における知的財産の価値を現時点で想定しようとしているのですから、非常に困難なことであるのは、想像に難くないと思います。

 また、特許権、著作権などの知的財産がそれ単体で価値を生み出せるかといえば、そうではありません。通常、関連するほかの知的財産も存在するでしょうし、その知的財産を活用するには特定のハードウェアやソフトウェアなどが存在することもあります。このため、知的財産を使ったファイナンスの際には、それらも含めた担保化、証券化、流動化が求められるでしょう。

 このように考えると、知的財産を引き当てとして資金調達を行う場合、特定の知的財産を活用する資金調達よりも、株式を発行して資金調達する「エクイティファイナンス」が有利な場合が多く存在します。ただし、エクイティファイナンスでは、既存株主の権利が希釈化するため、既存株主との利益調整が必要となります。

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