「すべてのIPレイヤでの高速化がわれわれの強み」、ジュニパーがWAN最適化製品の戦略を発表

ジュニパーネットワークスは5月10日、WAN高速化に関する今後の戦略を明らかにした。今後、WX、DXという製品ラインに対し、SSL通信の効率化やアプリケーションレベルの高速化といった拡張を施していくという。

» 2006年05月10日 16時38分 公開
[堀見誠司,ITmedia]

 同社は現在、Webアプリケーション高速化製品として、2005年に買収した2つの企業のプロダクトラインを持っている。サーバ負荷分散/HTTPアクセラレーションを担う米Redline Networksの「DX」シリーズ、およびWANトラフィック最適化を担う米Peribit Networksの「WX」、圧縮効率を向上させた「WXC」シリーズである。

 このうち、WX/WXCシリーズ用の集中管理ソフトウェアの最新版「WX Central Management System(CMS)5.2」がリリースされた。新しいWX CMSでは、NAT(Network Address Translation)に対応することでキャリアのNOCからWXを設置する複数の顧客サイトへの管理サービスを、プライベートアドレス空間に変更を加えずに実行できる。また、WANの帯域消費状況やSkypeなどのP2Pソフトを含むアプリケーションごとのパフォーマンスについてのトレンドリポートや、それに基づくトラフィックキューイングなどによるネットワーク資源の最適化も行えるようになった。

WAN高速化の戦略を説明する短田ET営業開発本部長

 また、アプリケーションの高速化については、(1)SSL通信の高速化、(2)コンテンツキャッシングの機能をWX、DX両シリーズに展開する。

 (1)については、SSLフロー内の暗号化データをいったん復号化し、平文のデータを解読してビットパターンを把握、再度暗号化して送信することで圧縮効率を上げることが可能。また機器間でトンネリングを行うため、平文が盗聴されることはない。(2)は、WX CMSで空き時間内にあらかじめWebコンテンツをキャッシュとして配信する「CDN(Contents Delivery Network)に似た発想による技術」(ET営業開発本部の短田聡志本部長)と、ルール設定でコンテンツのキャッシュ内容をコントロールする機能を組み合わせて、アプリケーションレベルの最適化を行う。これにより、CIFS(ファイル共有)、MAPI(メール)、HTTPなどのアプリケーションプロトコルの通信が高速化される。(1)(2)はいずれも製品を対向で利用する必要がある。

 そのほか同社では、モバイルユーザーやブランチオフィスなど、WXを設置していない環境に対してポリシーによるトラフィック制御や監視を行うためのPC用エージェントの配布も検討している。

 こうしたWAN高速化・最適化のロードマップは今冬までに実行される予定だが、具体的な時期や提供形態などは明らかにされなかった。

 WXでは、MSR(Molecular Sequence Reduction)という独自の圧縮アルゴリズムを採用している。専用辞書と照合して通信データの中に繰り返しのパターンを見つけ出し、その部分をタグ情報に置き換えてWAN上に流れるデータ量を抑えることができるもので、WXCに搭載されるHDDを利用するシーケンスキャッシング技術と合わせ、データ圧縮率の高さを競合との差別化ポイントとしている。同社は、エンタープライズ向けには「NetScreen」などのセキュリティアプライアンス群の販売に注力しているが、「IP、TCP、UDPいずれのレイヤでも通信を高速化できるのはジュニパーならでは特徴だ」(短田氏)とWAN最適化分野でのビジネス展開にも自信を見せた。

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