無償化を断行、熾烈さを増す「仮想化サーバ」市場(1/3 ページ)

Microsoftは仮想化製品を無償化し、ゲストOSには非Windows OSのサポートを強化することで、Longhorn Serverの仮想化技術の登場まで、ユーザーのつなぎとめを図ろうとしている。仮想化サーバ市場における現在の覇者VMwareや伏兵XENを抑えて、熾烈な戦いを制することはできるか。

» 2006年05月19日 07時00分 公開
[Peter Pawlak,Directions on Microsoft]
Directions on Microsoft 日本語版

 MicrosoftとEMC傘下のVMwareが繰り広げるサーバ仮想化市場を巡る戦いが、急速に激化している。VMwareが2006年2月に次期VMware Server製品の無償提供を発表したことを受けて、2006年2月にはMicrosoftも既にリリースされている対抗馬のVirtual Server 2005 R2を無償化することを発表した。またMicrosoftは、仮想マシン上でのゲストOSとしてのLinux利用に関するサポートの提供を発表したほか、Windows Longhorn Serverに仮想化技術が実装されるまでの暫定的なVirtual Serverのリリース予定を公表している。

Virtual Server 2005 R2 Enterprise Editionを無償提供へ

 コンピュータの仮想化とは、コンピュータの物理的なハードウェアリソースを複数の独立したパーティションに分割できる特殊なハイエンドのハードウェアを必要とせずに、コンピュータの物理的なハードウェアを抽象化し、従来のOS(WindowsやLinuxなど)から切り離すことで、複数のOSを同じコンピュータ上で同時に実行できるようにする技術を指す。

 現在の仮想化技術では通常、ホストOS(コンピュータに最初にインストールされているOS)のみがハードウェアと直接通信する。その他すべてのOS(仮想化技術においてはゲストOSと呼ばれる)とゲストOS上にインストールされたアプリケーションは、CPU、メモリ、I/Oコントローラ、グラフィックアダプタ、ネットワークアダプタ、その他の周辺機器をエミュレートする仮想マシン(VM)と通信する。VMは、1台のコンピュータ上で複数を同時に実行することができる。

 サーバの仮想化は、過去3年間ほどは、開発者やテスターによってマルチサーバおよびマルチOSネットワークのシミュレーションに使われてきた。最近では、実稼働データセンターでの利用も注目されるようになってきている。データセンターでの仮想化の利用には、例えば、サーバの利用効率の向上、可用性の向上、プロビジョニングの高速化、より柔軟な運用など、さまざまなメリットがある。

 データセンターでの仮想化導入の動きは、サーバ仮想化ソフトウェア市場を過熱させてきている。また、多くのアナリストやデータセンターアーキテクトは、今後5年以内にプロダクションサーバの仮想化が一般的に行われるようになると予想している。

 MicrosoftとVMwareは、この節目の時期に十分な市場シェアを獲得して、それぞれが提供するプラットフォームに顧客やベンダーをつなぎとめるだけのデファクトスタンダードを確立することが、戦略上いかに重要であるかを理解している。仮想化技術を実装したWindows “Longhorn” Serverのリリース(2007年後半予定)までは、VMwareのハイエンド(かつ高価な)製品ESX Serverにじかに競合するようなソリューションをMicrosoftは提供できないが、Virtual Server 2005 R2は十二分にVMwareのGSX Serverに張り合うことができる。

値下げ商戦の勃発

 2005年12月に、MicrosoftはGSXを標的としてVirtual Server 2005 R2の大幅な値下げに踏み切り、Standard Editionは99ドル、Enterprise Editionは199ドルと、およそ前バージョンの1/4に価格が改定された。

 これを受けてVMwareは2006年2月に、GSXの後継製品となるVMware Serverでは、ゲストOSでの64ビットおよびマルチプロセッササポートなど、Longhornの仮想化技術をリリースしなければMicrosoftは実現できない機能を導入するだけでなく、VMware Serverを無償で提供することを発表した。同製品は現在公開β段階にあり、リリースは2006年夏の予定である。

 Microsoftはこれに応酬し、2006年4月にVirtual Server 2005 R2 Enterprise Editionの32ビット版と64ビット版の両方を無償で提供し始めた(同時にStandard Editionの提供を打ち切っている。Standard Editionは搭載CPUが4基以下のサーバにしかインストールできないという制限があったが、それ以外にEnterprise Editionとの違いはない)。

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