アカマイが「復活」をかける動的コンテンツ配信ビジネス

コンテンツ配信の大手、アカマイが都内で記者説明を行い、今後の事業の中心をコマースアプリケーションなどWeb2.0型の動的なコンテンツ配信サービスにシフトしていくことを明らかにした。

» 2006年06月28日 18時30分 公開
[堀見誠司,ITmedia]

 「われわれは、Web2.0のリッチコンテンツ時代のビジネスインターネットを支える企業だ」――。2005年末にアカマイ日本法人の代表取締役社長に就任した小俣修一氏は、国内で目指す新たな役割をこう説明した。

 アカマイは6月28日、7月より開始する日本市場向けの事業戦略を発表した。事業戦略の中心となるのは、「システムインテグレーターとの協業による直販の強化」だ。

アカマイ社長の小俣修一氏はマクロメディアの常務取締役、BEAシステムズ取締役、NTTソフトウェア営業統括部長などを歴任した人物

 米Akamai Technologiesは、コンテンツ配信サービスのリーディングカンパニーとして知られる。同社が構築するインフラは、複数のキャッシュサーバにコンテンツを置き、負荷を分散させて効率的にコンテンツの高速配信を行う、いわゆるCDN(コンテンツ配信ネットワーク)である。これまでの配信サービスは、Webページなどの静的コンテンツ、ストリーミングなどが中心だったが、昨今の端末の多様化、Webのリッチコンテンツ化の流れを受け、今後はB2Bのeコマースを意識したアプリケーションベースの動的コンテンツ配信事業に注力するという。

コンレイデス会長(左)とラモン営業担当副社長

 国内では新戦略に合わせて動的コンテンツ配信サービス「Application Performance Solutions」(APS)を発表、イーシー・ワン、Jストリーム、NEC、ネットマークス、ビジネス・アーキテクツの5社のシステムインテグレーターと提携して、IT、オンライン取引、エンターテインメント関連企業におけるコンテンツ配信ソリューションの導入促進を図る。「動的コンテンツとしては、Web2.0的なものだけでなく、インターネット上の多様なソリューションが求められる。例えば地域限定配信といった付加価値配信を行うには、個別のインテグレーションが必要」と小俣氏はパートナー戦略について話す。

 APSでは、既存の約1万9000台のキャッシュサーバ、1000の高速分散ネットワークで構成されるインフラを活用して、B2B向けの「Web Application Acceleration」、B2C向けの「Dynamic Site Acceleration」、Webアプリケーションサーバのコンポーネントを分散処理して投票、キャンペーンなどに利用する「On-Demand Application Platform」といった3つのサービスを展開。アプリケーションによりキャッシュできないデータもあるため、IPプロトコルの最適化や圧縮、混雑時のルーティングなどの技術を盛り込む。

アカマイのNOC(ネットワークオペレーションセンター)ではコンテンツのヒット数やHTTP、ストリーミング配信時の帯域の状況を常時監視している

立ち直った国内拠点の次なるチャレンジ

 国内でのアカマイの活動は、ソフトバンクとのジョイントベンチャー、アカマイ・テクノロジーズ・ジャパンとして2000年に始まった。だが、2003年のソフトバンクとの資本提携解消を機に拠点を一度解散、完全子会社としてアカマイを設立した後も、それまで関係を築いてきた100社の顧客のシステムメンテナンスや代理店経由のみでのサービス販売という、守勢の活動を強いられてきた。

 eコマースが停滞する中で、同社は「2003年から地道な努力を続けた成果」(Akamai Technologies営業担当副社長兼国際事業担当GMのカルロス・ラモン氏)として、小俣氏を筆頭とする新体制を整え、新たにチャレンジする段階までこぎつけたという。今後、チャネル販売と並行して直販にも力を入れていくと同時に、顧客拡大に向けて国内独自のマーケティング体制も強化する。

 「iTunesではアカマイのプラットフォームを使い、5億曲もの楽曲ダウンロード配信を行っている。日本でもPC以外の(携帯電話などの)ハンドヘルド端末が隆盛で、今が大きなビジネスチャンスだと感じている」(Akamai Technologies会長のジョージ・コンレイデス氏)と、携帯電話向けコンテンツサービスでの展開も視野に入れている。

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