これだけは知っておきたいデータ管理の最新トレンド今どきのバックアップ入門(1/2 ページ)

とどまることを知らないデータの増加、IT環境の複雑化、そしてデータの重要性の向上は、ストレージやデータの管理を難しくしている。昨今ではデータの増加に対する単なるバックアップの効率化ばかりを考えていては対応しきれない時代だ。

» 2006年07月03日 08時15分 公開
[堀江徹,ITmedia]

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データ管理の現状と課題

 企業のビジネスインフラが電子化され始め30年以上が経過しようとしている。その間、データ容量は増加し、HDDは大容量化、低価格化が進んだ。企業のデータ管理に関する課題は、企業規模や従業員規模の増加に伴うデータ量の増加、バックアップの効率化、災害対策ばかりが注目され、それに付随する課題として、管理者の不足、管理コストの増加が語られてきた。

 しかし、昨今ではデータ管理の課題となる内容が少しずつ変化してきている。ITとビジネスの融合が進展するのと同時に、データ管理がビジネスに影響する度合いを高めているのだ。インターネットの普及に伴うeコマースや電子メール、リッチコンテンツの急激な増加により、管理しなければならないデータのタイプが増えているほか、ウイルスやフィッシング詐欺などの出現によるセキュリティへの懸念にも対処しなければならない。それだけでなく、企業の信頼性やビジネス基盤としてのコンプライアンス(法令順守)の認知もデータ管理の重要性を押し上げている要因だ。当然、企業のデータ資産は一度失われたら取り返しがつかないし、個人情報や機密情報であれば一度の流失が企業に大きなインパクトを与える。

 多くの企業では、依然として「データ容量の増加に伴うストレージ容量の不足」「バックアップウィンドウの削減」「IT環境の複雑化による、データ管理の複雑化」といった項目を大きな課題に据えているようだが、今後はコンプライアンスやセキュリティを視野に入れ、ストレージの効果運用やバックアップ手法を検討する必要がある。

 この連載では、最初にデータ管理の課題を考える上で重要となると思われる次の3つのキーワードから掘り下げて考えていこう。

1.RTOとRPO

2.システム保護とデータ保護

3.非構造型データの管理

RPOとRTO

 データを保護する上で第一に考慮する必要があるのがRPO(Recovery Point Objective)とRTO(Recovery Time Objective)という概念だ(図1)。RPOとは、どの時点のデータまでをリカバリ可能とするか、許容可能な最大データ損失量のことを意味する。RTOとは、システムの障害が発生した場合に完全復旧するまでに要する時間、つまり許容可能な最大システム停止時間のことを指している。

図1 RPOとRTO

 これらは、企業がデータ管理方法を決定する上で、最初に考えるべき問題となってくる。この2つの要素を基準にして、必要となる対策を決定する必要があるからだ。例えば、海外との証券取引は24時間365日間の連続したサービスの提供が不可欠となる。予期せぬシステム障害が発生した場合でも、障害発生の直前までのデータやトランザクションが保障され、さらに障害後も即座にサービスを開始できる状態にしなければならない。このような場合、RPOとRTOは共に数秒間〜数分間の余裕しかないと考えることができる。一方、社内グループでの共有ファイルサーバについては、数時間、数日間といった猶予がある場合が多い。

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