平井たくやIT担当大臣政務官に聞く―「今こそ必要な選択と集中、不要不急システムは予算を認めず」崖っぷち!電子政府〜迷走する4500億円プロジェクトの行方・第6回(最終回)(1/2 ページ)

政府が今年1月に発表した「IT新改革戦略」の策定を、内閣府・IT担当大臣政務官として指揮したのが平井たくや衆議院議員だ。「電子政府は単なる行政事務の電子化ではなく、新たな政府をつくる社会革命」と語る平井氏に、今後の方向性を聞いた。

» 2006年08月25日 08時00分 公開
[山崎康志+編集部,ITmedia]

――IT新改革戦略は、府省共通システムの推進体制を「2006年度早期に整備する」と打ち出しました。既に内閣官房にGPMOが設置されましたが、従来の体制と具体的にどう違うのですか。

平井 従来は電子政府の全体最適を調整する組織がありませんでした。各システムの最適化計画もバラバラに作成されていて、その「選択と集中」を図る機能がなかったんです。それを担うのがGPMOです。開発スケジュールの見直し、予算の再検討に当たり、システムによっては開発取り止めもあり得ます。

8月末に開発凍結を特定

――電子政府の予算査定は、総務省行政管理局が実質的に行って来ましたよね。

平井 行管局とGPMOのチェック機能はまったく違います。行管局の「予算削減可能性調査」は、各省庁が予算要求した後に行い、まあ、予算をつけることを前提とした査定でした。GPMOの調整は予算要求の前に行う。電子政府の全体最適の視点から判断し、不要不急のものは予算要求させません。これは財政当局にとっても渡りに舟なんですよ。従来、行管局のお墨付きがつくと、財務省は要求額を減らせても、見送りには出来なかった。だから、レガシーシステムの改変予算など青天井になってしまった。各省庁がみんな要求したからです。それ自体おかしい。

――電子政府が、そういう曖昧な体制で進められて来た原因は何でしょう。

平井 原因はね、「e-Japan戦略」の生い立ちにもあるんですよ。2001年1月に森内閣が始めた時は景気対策の色彩が濃かった。当時、日本経済は「失われた10年」の終盤で、ITの冠がつけば補正予算はすべて通りました。国は毎年2兆円のIT投資をしていたわけです。それから5年、得られた唯一の成果はインフラの整備。世界一速く安いブロードバンド通信が実現したことと、行政の申請手続が96%電子化されたこと、これだけです。もっとも、電子申請の利用率は1%に満たない。今すべきことは、景気対策で突っ走ってきた電子政府を見直し、「選択と集中」を図ることです。

――85件の最適化計画の見直しはいつ決まるんですか。

平井 いま検討しているところですが、予算要求の前、8月一杯には決めます。少なくとも開発スケジュールの優先順位はつけます。既に人事・給与業務システムは各省庁への導入計画を変更しましたし、外務省の旅券申請システムは開発取り止めです。旅券申請は8億円も投じて利用者が37人しかいない。これじゃ国民に説明つきません。

――人事院の人事・給与業務システムの場合、運用費の削減額は20億円としていますが、初期投資はその数倍かかっている。こういう杜撰なIT調達の責任を問うべきではありませんか。

平井 責任問題は当然出てきます。ただし、IT調達が予算の単年度執行の枠組みに合わないことも事実です。それに10億円を超えるシステム開発の成功率はせいぜい50-60%。欧米の電子政府もその程度なんです。ただし、欧米では失敗の事実は公表されている。失敗を認めないと、人事院だけでなく、社会保険オンラインシステムのように、毎年1000億円もの運用費がかかっていながら、不具合だらけのシステムが出来上がってしまう。まず失敗を認めること、それがないと前へ進めません。

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