「管理優先」の営業支援システムを蘇生させる企業にはびこる「間違いだらけのIT経営」:第13回(1/2 ページ)

レイムダック化した営業支援システム(CRM/SFA)をいかに「現場が使える道具」にするか、実例を見ながら検討しよう。

» 2006年09月12日 12時00分 公開
[増岡直二郎,アイティセレクト]

 「システムの蘇生」という話題になると、とかく技術論や手段の議論になりがちだ。しかしシステムを生き返らせるには、あくまでも「顧客第一」という理念を議論の根底に据えておく必要がある。これはごく当たり前のことであるが、以下の例にもあるように、システムがレイムダック化するのは「顧客第一」の理念を認識していないことに原因の多くがあり、ひいてはここに間違った経営の根源がある。

「内向きシステム」は現場泣かせ

 電子機器・部品の販社C社の実例を見ながら傾向と対策を検討しよう。

 C社は、最近競合他社にシェアを奪われ、一方営業担当者をこれ以上増やせないという状況を解決しようとして、CRMの考えに基づくSFAパッケージソフトを導入した。このソフトは、「顧客登録」「案件情報」「行動予定・日報」「商談状況確認」「検索」「分析」の6モジュールから成る。しかし、そこで肝心の「顧客第一」を忘れ、管理指向に陥ったため、哀れにもレイムダック化した。

 4、5年前からSFAは営業担当者を管理するための道具だという認識が払拭されたとはいうが、まだまだ管理者のための道具として見なされ、C社での認識もその例外ではなかった。

 「行動予定・日報」モジュールの例を挙げよう。「行動予定」は、営業担当者が毎日の入力や、管理されることに不満を持ち、適当に入力していた。なるほど「行動予定」には、質の悪い営業マンの手抜きをチェックする意味はあろう。しかしそれは行動をチェックしなくても、業績結果に現れるはずである。「日報」も書かせるだけではなく、読む人も「アドバイス」「指示」などのコメントを入れて返信できるようにしてあったというが、コメントが「拝承」「がんばれ」「必受注のこと」「問題あれば相談のこと」など、毒にも薬にもならない内容では、まったく無意味だった。

 日報作成者が報告のための「問題視されない問題」をいかに見つけ出すか毎日苦労していた実態を、経営陣は知っているのだろうか。「内向きのシステム」は現場泣かせとなる。

 「商談状況確認」モジュールにも問題があった。「進行中商談状況確認画面」があり、商談についての詳細情報を得られるのだが、営業担当者は担当案件については熟知していた。それより、その入力作業によってメリットを得られないばかりか、営業活動をディスターブされていた。さらに、受注決定にまだ時間がかかる案件については、今月の目標受注高が未達成なので「計上しろ」と上司から強要されたり、まだ幹部の出番でないのに「俺をお客の所へ連れて行け」と要求されたりして、受注決定の助けにならないのである。そのため担当者はディスターブされることを嫌って、「商談案件」には無難な案件しか入力しなくなっていた。

 「検索」「分析」も「管理だけでなく、戦略としても使える集計機能」というが、「売上・粗利推移」「訪問集計」などほとんどが管理指向である。そもそも「顧客との信頼関係」構築や、個人がなかなか公にしたがらない濃密な「顧客情報」収集のためには、個人間の信頼に裏づけられた人間関係やコミュニケーションという人間力が求められ、その補完として「検索」や「分析」などがあると認識すべきだ。

 以上は、基本的にはシステム構築側の「顧客第一」を忘れた内向き偏向という「意識の問題」が原因となっっているが、運用の仕方にも重大欠陥がある。

       1|2 次のページへ

Copyright© 2010 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ