テロ以来の株価急落で露呈――“証券会社のIT問題”

2月27日に起きた中国での株式相場の暴落は、米国の数社の有名証券会社のインフラの問題を露呈する結果となった。

» 2007年03月01日 17時23分 公開
[Scott Ferguson,eWEEK]
eWEEK

 ダウ・ジョーンズ工業平均株価が2001年9月11日の同時テロ以来、1日の下げ幅としては最大となる3.3%下落した翌日、オンライン証券各社は自社のWebアプリケーションが障害から立ち直るかどうか不安を抱きながら見守った。

 2月28日中にダウ・ジョーンズ工業平均株価が反発したのに伴い、オンライン証券各社の業務も正常に復帰したように見えた。しかしネットワーク/Webアプリケーション監視サービス会社がこれまでにまとめたデータは、改善の余地が極めて大きいことを示している。

 ネットワーク/Webアプリケーションのパフォーマンス/可用性監視サービスの大手でカリフォルニア州サンマテオに本社を置くKeynote Systemsは、混乱を引き起こした問題を幾つか発見した。Keynoteの報告書によると、数社のオンライン証券会社では、オンライン株式取引を完了するのに平均の2倍の時間がかかった。

 さらにKeynoteでは、2月27日午前10時半から午後1時半(太平洋時間)の間に同社の調査員が取引を成立させることができた合計回数が25%低下したことを確認した。

 「これは、太平洋時間で午前10時半から午後1時半の間にオンライン取引を試みた人々の25%以上が、取引を完了できなかった可能性があることを意味する」――2月28日に公表された報告書でKeynoteはこう分析している。

 証券会社での障害は、ダウ・ジョーンズ指数のネットワークに「システム遅延問題」が生じた2月27日に始まった。この問題のせいで、ダウ・ジョーンズ工業平均株価の計算に70分の遅れが生じることになった。

 Reutersによると、主な問題は市場データを計算インデックスに入力するシステムの内部で最初に起きた。この問題は東部時間午後3時に解決したが、ダウ・ジョーンズ工業平均株価は約500ポイント下落した。

 マサチューセッツ州レキシントンにあるGomezでパフォーマンス戦略を担当するマット・ポープセル副社長によると、同社はこの時点で問題を認識し始めたという。Gomezでは、25社の証券会社のWebアプリケーションのモニタリングを行っている。

 ダウ・ジョーンズ指数に問題が起きたというニュースが広がるのに伴い、顧客は自分の口座や注文をチェックしようとしたが果たせなかった。ポープセル氏によると、問題は、多くのネットワークが大量のトラフィックを一度に処理しきれなかったことだという。

 「ホームページをチェックするだけなら問題はない。しかし詳細なデータを見ようとすると、非常に限られたリソースをめぐって1人のユーザーが何百万人ものユーザーと競争することになる。その結果、画面が読み込まれなくなり、ユーザーは自分の所有する株式の詳細なデータを見ることができなくなったのだ」とポープセル氏は説明する。

 Gomezのベンチマークによると、通常、証券会社が成り行き注文価格見積もりプロセスにかかる平均応答時間(一連の手続きで各Webページダウンロードしている間に経過する時間)は、約13.46秒である。

 2月27日の障害発生中、GomezがモニタリングしているWells FargoやThe Vanguard Groupといった伝統的な証券会社では、通常の速度と比べて2〜8倍も時間がかかるというパフォーマンスの低下がみられた。例えばVanguardの場合、通常は応答するのに11.5秒かかる処理が、Gomezの計測によると、2月27日には208秒かかったという。

 ポープセル氏によると、比較的新興のオンライン証券各社は2月27日、顧客からのアクセス殺到にかなりうまく対処できたようだ。例えばETradeでは、5秒間の応答時間を維持することができた。

 ポープセル氏は、老舗の証券会社が需要に対応できなかった理由については具体的に述べなかったが、証券会社のネットワーク能力、帯域幅、ハードウェア、各種アプリケーションを実行するコード、さらには証券会社と顧客との間の物理的距離といった問題が絡んでいる可能性があると指摘した。

 2月27日のような問題は日常的に起きるわけではないが、こういったネットワークの障害に起因する混乱は、証券各社がインフラを真剣に見直すことを促すきっかけになるだろう、とポープセル氏は語る。「この種のWebアプリケーションをサポートするには、適切なアプローチが必要だ」と同氏。

 2月28日までに、ほとんどの証券取引が正常に復帰した。

 「IT専門家として、今日(2月28日)何が起きるのか戦々恐々としていた。昨日と比べると今日は状況がずっと落ち着いたが、少し後遺症も残っている。昨日は試練の日だった」(ポープセル氏)

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