Google幹部ディボナ氏が語る「Googleとオープンソース」(2/2 ページ)

» 2007年05月21日 13時05分 公開
[Darryl K. Taft,eWEEK]
eWEEK
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 例えば最近では、MySQLを効率的に使用し、レプリケーションなどにも役立つツールをたくさんオープンソース化しました。なかなか楽しい作業でしたよ。ごくマイナーなアップデートから、「Google Web Toolkit」などの大物まで、実にさまざまなものを公開したのです。Googleが成し遂げてきた技術革新を世界中の人々を共有するのに、オープンソース化は最適な手段ですね。

――現時点でオープンソース化を検討してる技術はありますか。

ディボナ氏 ご承知の通り、まだリリースしていないものについてはお話しできません。何かをオープンソース化し、それを発表する場合は、すべての準備が整ってからにしたいのです。5月31日に開催する「Google Developer Day」でおもしろい発表ができるよう、力を尽くしているところです。

――Googleにとって、GPLv3(第3版)はどのようなインパクトを持っていますか。

ディボナ氏 9カ月前に同じ質問をされていたら、第3版の最初のドラフトに含まれていたアプリケーションサービスプロバイダーのプロビジョンに関わる規定から、これに準拠したプログラムを利用することはできないと答えたでしょう。また、今も同じ気持ちでいますが、第3版を採用できないからといって、すべておしまいだというわけでもありませんでした。利用可能なあらゆるオープンソースソフトウェアを使う必要はないのです。

 しかし、GPLv3の最新ドラフトではプロビジョンに関する規定が廃止されたため、同版を適用したソフトウェアを社内の開発に用い、最終的に製品化する可能性は高まったと言えます。ユーザーが(オープンソースソフトウェアに)そうした制限が設けられてもかまわないと考えたとしても、以前のままではGPLv3を製品に適用し、エンドユーザーへ提供することは不可能でした。

 Googleは提供されたコードを管理することを得意としていますから、開発者がコードにどのような修正を加えていようと、われわれとしては一向にかまいませんでした。それが問題になる状況はいっさいなかったのです。(GPLの)最新版は、ほんとうにすぐれたライセンスに仕上がっていますね。

――このところMicrosoftが、フリーウェアおよびオープンソースソフトウェアは同社の特許を多数侵害していると主張していますが、これに対して何か考えはありますか。

ディボナ氏 われわれも気になっている動きです。大多数の人々と同じく、Microsoftには(侵害されているという特許を)挙げてもらいたいと思っていますが、しばらくは様子を見守るしかないでしょう。特許の侵害を言い立てるのは簡単ですが、そうした発言には具体的な行動が伴っていなければなりません。

――ですが、彼らの主張に確かな裏付けがあった場合、Googleのような立場の企業は窮地に陥るのではないですか。

ディボナ氏 どうでしょうね。やはり手に入れられる情報が少なすぎるので、今はまだ判断できません。

――Sun MicrosystemsによるJavaのオープンソース化によって、開発プラットフォームとしてのJavaに対するGoogleの意識は変わりましたか。

ディボナ氏 われわれのJavaに対する見方はこれまでと同じですが、Javaの利用性が増したことは確かです。Googleでは、きわめて先進的なJava開発プロジェクトを多数進めていますが、SunがJavaをGPLの下でリリースする前は、パッチを提供するにもバグを修復するにも、ソースコードの利用に関する契約をいちいち同社と結んでいました。現在Googleは、Java開発者としてすぐれた能力を持ち、「Java Community Process」にも積極的に参加しているジョシュア・ブロックのような人材を抱えています。

 そうした背景のもと、われわれはパッチの提供や新機能の開発を常に続けてきました。ですから、Javaのオープンソース化は大歓迎なのです。オープンソース化を喜んでいる理由はほかにもあります。かつては不可能だった方法で特定のコードにアクセスできるようになったのも、形式張った手順を踏まずに問題点を修復したり、パッチを提供できるようになったのも、大きな進歩です。Javaがオープンソースプロジェクトになったのなら、あれもこれもリリースできるぞというケースが増えました。JavaがGPLに準拠したことにより、われわれは大いなる自由を享受できるようになりました。

――Black DuckやPalamidaなどのツールを利用してコードの評価を行ったことがありますか。あるいは、そうする気はありますか。

ディボナ氏 そうしたツールを使ったことはありません。提供を受けるコードについてはきわめて厳格な管理を徹底していますし、Googleはエンジニアの教育にも絶対の自信を持っていますから。当社がコードベースを明確に管理している証拠に、わたしは社内プロジェクトのバイナリコードの最後を見れば、どのオープンソースソフトウェアのものか確実に判断できます。

 具体的な計画などを持ち出す意図はありませんが、例えば買収を考えるなら、彼らのツールは興味深い対象と言えます。ですが、社内で使用する気にはなりません。そうしたツールの実用性が増すのはよいことですが、現在のGoogleには必要ないものです。もちろん、たいへんすぐれた質の高い製品だとは思っていますよ。

――先ほど、多数のオープンソースコンポーネントから構成されているスタックの上で、たくさんのプロプライエタリコードを動作させているとおっしゃいましたが、どういったものを意味していたのですか。

ディボナ氏 みなさんがLinux上でアプリケーションを動作させているのと、それほど変わらない環境です。WebサーバやWebアプリケーションと同じ方法で運用し、Linuxはカーネルおよびオペレーティングシステムとして、その下で動かしています。

 オープンソースライブラリを使用している場合、社内におけるコードの採用には細心の注意を払っています。Googleはコードを社内に持ち込むに当たり、常に厳しい規律を適用してきたのです。

 社内でコードを開発し、対外的に提供する際は、同コードをレポジトリに入れる前に、当事者ではないGoogle社員がこれを念入りに調べることになっています。だれかが突如として2万5000行におよぶコードを提供しようとしても、すんなり認められる可能性はないでしょう。われわれには、そうしたコードがほんとうに有用であることを見極める術があります。そのコードをこのディレクトリに入れたいのなら、われわれが追跡できるよう限定的なタグを付けなさいといった感じで、アドバイスをします。提供されるコードの統制ならお手の物だと、胸を張って言えますね。

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